三国大洋のスクラップブック

民生用ドローンは“スマートフォン戦争”の平和の配当

三国大洋

2014-11-29 08:00

 今年6月に株式公開したアクションカメラメーカーのGoProが、コンシューマー向けドローン(drone、リモコンヘリコプター)の分野に新規参入するというニュースがWSJで米国時間11月26日に報じられていた。「なぜカメラメーカーがドローンを…?」と一瞬意外に思い、関連の記事をいくつか読んでみて分かったのは、この手のヘリコプターにはカメラが付きものだということ。

 つまり、GoProにとって、この新規参入は比較的敷居が低く、また売上拡大につながる“攻めの一手”であると同時に、既存製品の潜在的な売上浸食を防ぐための“守りの一手”でもあるようだ(既存のドローンには、GoPro製品を取り付けるためのアタッチメントなどを用意したものもあるらしい)。


[GoPro: Pelican Learns To Fly]

 アクションカメラにしても、ドローンにしても、まだニッチな分野であるのはほぼ間違いないだろうが、それでも、たとえばGoProの今年9月末までの売り上げが7億6300万ドル(前年は6億2400万ドル)とか、コンシューマー向けドローンの有力メーカーである仏Parrotのドローンの売り上げが今年すでに約2億ドル(前年比130%増)といった数字も出ているので、それぞれ無視できない規模のニッチになりつつある、と言っていいかもしれない。

 Parrotの2億ドルという数字はQUARTZに出ているもので、WSJ記事には第3四半期のドローンの売り上げが2420万ドル(前年比38%増)とある。このWSJ記事には、中国(香港)のDJIという別の有力なドローンメーカーについて、昨年の売り上げが1億3000万ドルで、今年は少なくとも3倍増になる見通しといった記述もある。ちなみにParrotの製品は、Apple Store(オンライン)で4万3000円で買えたりもする。

 QUARTZでは、民生用ドローン市場の規模が今後10年間で15億ドル程度まで拡大するという調査会社Teal Groupの見通しも紹介されているが、そのうちの何割をコンシューマー向け製品が占めるのかはよくわからない(あるいは産業用、コンシューマー用といった切り分けは現状あまり意味がないのかもしれない)。

 GoProのドローン分野参入の話題に触れたThe Vergeの記事には、この種の製品を比較的簡単に開発できるようになり、かなり手頃な価格で提供できるようにもなった背景に、スマートフォン関連技術の開発と広汎な普及があると出ている(ちなみに、GoProが投入を計画しているのは1台500~1000ドル程度のカメラ付きドローン)。

 この指摘の主は、雑誌WIREDの編集長から3D Roboticsというベンチャー企業の経営者に転じたChris Andersonで、引用元のForeign Policyインタビュー記事には「スマートフォンが信じられないほど広く普及した(大量に生産されるようになった)おかげで、それに関連する各種のセンサ類やGPS、カメラ、ARMのコアプロセッサ、無線関連技術、メモリ、バッテリなどが、現在では1個数ドルといった値段で手に入るようになった」「かつて軍事用や産業用に使われていたものが、今ではRadioShack(街のパーツ屋)で買えるようになっている」といった指摘がある。「ドローンはスマートフォン戦争から生じた平和の配当(“Drones are the peace dividend of smartphone wars”)」というキャッチの一文はそういうことを指している。

 The Vergeでは、この種のドローンの市場がまだ飽和とはほど遠く、「機体(本体)、カメラ、スマートフォン」という3つの要素を一体のものとして捉えると、まだまだいろいろと新しいアイデアを試せる余地が残っている、などとも指摘している。

 その例証のような形で、香港メーカーのDJIが4Kカメラ内蔵型の新製品を発表した際、ドローンではなく「空飛ぶカメラ(“aerial camera”)」という言葉を使っていたと記している(など同社の「Phantom 2」という先行機種はGoProを外付けで利用するもののようだ)。


[This is the most amazing drone we've seen yet]

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