極地研、観測システム刷新--解析時間4分の1、精度8倍

山田竜司 (編集部)

2015-02-27 15:22

 大学共同利用機関法人の国立極地研究所は、人工衛星や南極域・北極域の観測地から送信される観測データを解析するための「極域科学コンピューターシステム」を刷新、2月1日からシステムの稼働を開始している。日立製作所が発表した。

 システムは、流体解析や気象予測などの大規模シミュレーションに高い性能を発揮するというスーパーコンピュータ「SR24000」を中核とした。従来システム比約5.6倍となる合計 40.41TFLOPSの総合理論演算性能、従来システム比約6.5倍のデータ転送速度を持ち、観測データの解析時間を約4分の1に短縮するという。

 また、総メモリ容量を従来システム比約9.3倍の18.5Tバイトに増強したことにより、解析に利用する観測データ量を大幅に拡大し、解析精度を約8倍に向上したという。

 近年、人工衛星での広域観測や観測技術・データ転送技術の向上により、日々生成される観測データは増加している。極地研は、観測により得られる大量のデータに対し、より短期間で高精度な解析を実現するために従来の研究用システムを刷新、演算性能を大幅に向上したシステムを新たに導入したという。

 システムは、例えば、地球環境に大きな影響を及ぼす南極域・北極域の気候や海洋変動のメカニズムを解明する研究に活用され、地球の将来的な気候変動の予測に寄与することが期待できるとした。また、オーロラ現象と太陽風による磁気圏変動の因果関係など、宇宙空間の環境変化を解明する地球磁気圏物理分野の研究にも活用される。

 システムは、極地研に所属する研究者のほか、極地研と共同で研究する大学や関連研究機関に所属する全国の研究者に共同利用されるとした。

 観測データを解析する演算向けサーバに、POWER8プロセッサを最大20コア搭載できる「SR24000 モデル XP1」では74ノード採用して、総合理論演算性能が40.4TFLOPSという。また、自然界に近いシミュレーション解析に必要となる物理乱数を演算する物理乱数向けサーバにはより高スペックな「SR24000 モデル XP2」を1ノード採用しているとした。

 また、ユニファイドストレージ「Hitachi Unified Storage 100」シリーズを採用し、ストレージ容量は合計約210Tバイト。分散共有ファイルシステム「Hitachi Striping File System」を活用、、高速なデータ転送によって複数ノードによる並列処理の高速化を実現しているとした。これらにより、膨大な観測データをこれまで以上に高速かつ高精度に解析でき、解析結果のデータを十分に格納できる環境を構築したと説明している。


システムの概要図

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