ウェブを高速化する「HTTP/2」を知る

Steven J. Vaughan-Nichols (Special to ZDNET.com) 翻訳校正: 石橋啓一郎

2015-03-04 06:00

 これまでHTTPの最新バージョンだったHTTP/1.1が承認されたのは1999年だ。その頃、ハイエンドPCには500MHzの「Pentium III」が搭載されており、米国の大統領はBill Clinton氏だった。ソフトウェアエンジニアは、Y2K問題への対応で忙しかった頃だ。インターネットに関して言えば、米国の連邦通信委員会はブロードバンドを200Kbps以上の回線と定義しており、ほとんどのユーザーは56Kbpsのモデムで接続していた。その後時代は大きく変わったが、ウェブの基礎を担うプロトコルであるHTTPも、ようやく変わることになった。

 2年以上もの検討を経て、インターネットエンジニアリングタスクフォース(IETF)がとうとうHTTP/2を承認したのだ。HTTP/2は2つの仕様から構成されている。新しいプロトコルそのものと、HTTP/2のヘッダ圧縮機能を提供する「HPACK」だ。改訂されたプロトコルは、「より高速なブラウジング体験を提供し、必要な帯域を減らし、安全な接続を利用しやすくする」とされる。

 HTTP/2は部分的にGoogleが提案したSPDY(スピーディと読む)と呼ばれるプロトコルをベースとしており、速度向上に関する部分は、ほとんどこのプロトコルから継承している。両プロトコルの間に競争はない。SPDYはHTTP/2の元であって、競争相手ではない。

 HTTP/2でトラフィックを高速化する第1の手段は、HTTP 1.1では4つのテキストメッセージスタイルを使用していたのに対し、バイナリフォーマットを採用したことだ。この方がウェブサーバやブラウザにとって処理が単純になるだけでなく、サイズもよりコンパクトになる。ウェブページがコンパクトになれば、送信にかかる時間も短くなるというわけだ。

 また、HTTP/2では多重化を行っている。これによって、HTTP 1.1にあったトラフィックが最初でブロックされてしまう問題を避けることができ、ウェブサイトの応答が速くなる。

 従来のHTTPでは、ウェブサイトにアクセスするたびに4つから8つのTCP/IP接続が開始されるにもかかわらず、1度に1つのリクエストしか処理することができなかった。HTTP/2では、ウェブサイトは1つのTCP/IP接続しか受け取らないが、複数のリクエストを同時に処理することができる。いくつの数のストリームを平行して扱えるかは、ブラウザによって決まる。これによって、データ接続はより高速で簡単になる。

 さらに、HTTP/2にはサーバプッシュ機能もあり、データの送信を高速化できる。現在は、サイトに接続すると最初にそのページのHTMLが送信され、その後ブラウザがJavaScript、Flash、画像などを要求するという順序で処理されている。このため、ページ1枚ごとに多くの接続が必要になる。サーバプッシュを利用することで、サーバは、ブラウザがローカルキャッシュに持っていると思われるものを除き、ページのコンテンツ全体をいきなり送信することができる。

 HTTP/2では、ウェブページの一部の要素を優先的に送信することもできる。どの要素の優先順位が高いかは、ブラウザとサーバに依存する。ブラウザはどの要素を優先したいかを伝えることはできるが(たとえばYouTubeの場合は動画かもしれない)、最終的に決定するのはサーバ側だ。

 また、各HTTP接続の冒頭にはヘッダがある。HTTPはステートレスプロトコルであり、これはすべての接続が要求と応答の組から構成され、それ以前やそれ以後の接続は参照しないことを意味している。従って、各接続のHTTPヘッダには、その接続に関して必要な情報が含まれている必要がある。

 時間が経つにつれて、これらのヘッダは巨大で複雑なものになっていった。ヘッダが2005年に標準化されたときには、すでに116種類のヘッダフィールドが存在していたほどだ。そのすべてを、各ページのすべての要素ごとに送信する必要があり、その多くは重複する情報だった。そのため、HPACKではヘッダの情報を圧縮することで、このオーバーヘッドを縮小しページの送信を高速化している。

 これは大したことではないように聞こえるかもしれない。しかし、考えてみてほしい。MozillaのプラットフォームソフトウェアエンジニアであるPatrick McManus氏は、各TCP接続は平均1400バイトで、1つのページは多くの場合80以上の「アセット」から構成されていることを明らかにした(そのアセットごとに接続が必要になる)。これをすべて合わせると、ウェブページの平均サイズは1Mバイトを超えることになる。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. セキュリティ

    「デジタル・フォレンジック」から始まるセキュリティ災禍論--活用したいIT業界の防災マニュアル

  2. 運用管理

    「無線LANがつながらない」という問い合わせにAIで対応、トラブル解決の切り札とは

  3. 運用管理

    Oracle DatabaseのAzure移行時におけるポイント、移行前に確認しておきたい障害対策

  4. 運用管理

    Google Chrome ブラウザ がセキュリティを強化、ゼロトラスト移行で高まるブラウザの重要性

  5. ビジネスアプリケーション

    技術進化でさらに発展するデータサイエンス/アナリティクス、最新の6大トレンドを解説

ZDNET Japan クイックポール

注目している大規模言語モデル(LLM)を教えてください

NEWSLETTERS

エンタープライズ・コンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]