IoTによる安全管理システムの実証実験--NTT Comと大林組

NO BUDGET

2015-03-26 07:00

 NTTコミュニケーションズ(NTT Com)と大林組は3月25日、建設業の現場担当者が安全に働ける環境の整備を目指し、IoT(Internet of Things、モノのインターネット)の取り組みの1つとして、クラウドとウェアラブルセンサを活用した作業員向け安全管理システムの本格的な実証実験を、4月から開始すると発表した。

 両社では、同システムにより気温の上昇に伴う作業員の熱ストレス(外部の気温が身体に負荷をかけていること)を可視化し、作業員本人や管理者などが体調管理や事故防止を目的とした対策や判断ができるようにし、建設現場のワークスタイル変革を推進する。


機能素材「hitoe」を用いたウェアラブルセンサ試作品

 大林組では現在、作業員の熱中症対策として、暑さ指数(WBGT:Wet-Bulb Globe Temperature:湿球黒球温度)を用いた管理を実施しているが、個々の作業員の体力や体調の違いから、熱中症事故の根絶は困難だった。

 対策の1つとして、管理者がリアルタイムに心拍数の増加といった作業員の個々の体調を把握することが期待されている。技術要件として、(1)作業中のバイタルデータを長時間継続してモニタリングする、(2)複数の作業員を同時にモニタリングする、(3)バイタルデータを解析し、その結果に応じリアルタイムに通知するという3つの技術要件が必要となる。

 このうち技術要件(1)については、2月にNTT Comと共同で実証実験を実施した。NTTと東レが開発した、着衣するだけで心拍数や心電位を取得できる機能繊維素材「hitoe」を用い、作業中の作業員の心拍数などのバイタルデータを、試験的に実際の労働時間である8時間以上にわたり継続して取得、モニタリングすることに成功している。

 4月から開始する実証実験は、残る技術要件(2)(3)を確認するためのもの。今回はhitoeによるウェアラブルセンサに加え、NTT Comが独自に開発したクラウドベースのヒューマンセンシングシステムの1つである安全管理システムを用いる。

 このシステムでは、熱ストレス推定、疲労推定、姿勢推定、リラックス度推定、リフレッシュ度推定などさまざまな分析、通知が低コストで実現できる。

 本実証実験において大林組は、これまでの安全管理手法とNTT Comが開発した安全管理システムを検証し、より安全で合理的かつ経済的な管理体制作りに向け、建設現場用のカスタマイズ項目の抽出や、耐久性、操作性などを確認する。

 また、NTT Comは上記クラウドベースの安全管理システムの実現において重要となる、外部からの攻撃や侵入を防ぐセキュアな通信環境や各推定技術の精度向上などに関する検証、および実際の作業環境における操作性、使いやすさを確認する。


安全管理システムイメージ図

 ※MQTT(Message Queuing Telemetry Transport):TCP/IPネットワークで利用できる通信プロトコルの1つで、多数の機器間で、短いメッセージを頻繁に送受信する場合に向いた軽量なプロトコル。ヘッダ部分が最小で2バイトと小さく、HTTPで同様の通信を行う場合よりも通信量、CPU負荷、電力消費量などを数十分の一に抑えることができ、多数のセンサの遠隔監視など、M2M(Machine to Machine)ネットワークやIoT分野での普及が見込まれる。

 両社は今後も引き続き連携し、NTT ComはETSI(European Telecommunications Standards Institute:欧州電気標準化機構。米国ANSI:アメリカ規格協会、日本のTTC:電信電話技術委員会に相当)が指定する国際標準様式に準拠した同システムのグローバルなサービス展開を目指すとともに、クラウドと連携したヒューマンセンシングシステムの拡張開発および利用拡大に向けて積極的に取り組む。

 大林組では、バイタルデータなどの活用により、作業員や従業員にとってより安全な作業環境の実現を目指すとしている。

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