多くの企業が4月1日に、新入社員を迎えた。入社式の社長訓示は、各社の事業戦略示す一材料となる。引き続き、主要企業の訓辞を紹介する。各社とも、ビジネス環境の急激な変化と対応について触れている。
日立製作所 代表執行役社長兼COO 東原敏昭氏
日立製作所 代表執行役社長兼COO 東原敏昭氏
日立は今年で創業105年を迎え、世界有数の大企業へと成長してきましたが、過去の歴史の中では、何度も大きな困難に見舞われてきました。しかしそのたびに、社員全員が一丸となって困難に立ち向かい、これを克服して、さらに大きく成長してきたのです。こうして受け継がれてきた企業理念や日立創業の精神を、みなさんにも理解し、共有していただきたいと思います。
(注力している)社会イノベーション事業は、より安全で安心な社会をめざして、日立が培ってきたインフラ技術と、高度なITを組み合わせた事業で、鉄道、水処理、エネルギーなどの社会インフラとITとを有機的に連携させ、より高度な製品やサービスとして提供することを意味します。
ここで、いくつか事例を紹介します。最初は、英国の鉄道事業です。日立のClass395は、2009年12月に運用を開始しました。運用開始前に81分かかっていた乗車時間が44分も短縮され、かつ、安心して通勤に使える電車として高い評価を得ています。短縮された44分間で家族と一緒に食事が楽しめるという声も聞きます。私たちの社会イノベーション事業が人びとのQoL向上につながる事例です。
2つ目は、モルディブの水処理事業の事例です。モルディブは四方を海に囲まれていますが、河川はなく、飲料水は雨水や地下水が頼りでした。日立は、海水淡水化装置を納入し、飲み水を供給するとともに、配水管網が目に見える形で効率的に集中管理できるITシステムを導入しました。このシステムの導入により、日常生活に関わる水供給情報を住民にきめ細かく提供できるようになりました。
3つ目の事例はエネルギー関係です。大分ソーラーパワー株式会社に納入した太陽光発電システムは、82MWの発電容量で約3万世帯が生活できる電力量です。太陽電池モジュールも約34万枚あり、故障モジュールの特定を人手でやろうとすると大変な時間と労力を費やします。日立は太陽電池モジュールの故障検出アルゴリズムを開発、適用し、短時間で故障箇所を特定し、稼働率の向上を図っています。このように、日立は人びとの生活を豊かにする社会イノベーション事業をグローバルに展開しているのです。
私たちを取り巻く環境はグローバルに日々変化し、そこで生じるさまざまな課題も変化しています。皆さんにも変化に対応し、成長し続けるマインドを持ってもらいたい。そのためには、さまざまな課題を当事者意識を持って解決に当たることです。私ならどう考え、どう行動するか、I think、I will do と一人称で主体的に活動することを心がけてください。今日入社した皆さんが世界に通用するプロフェッショナルな人財へと成長し、グローバルに活躍されることを期待します。