マイナンバ―がやってくる

待ったなしのマイナンバー対応(後編)--自治体の責務と番号のビジネス利用

大川淳 山田竜司 (編集部)

2015-05-25 07:30

 前編では、マイナンバー制度について、企業が何をなすべきかについて考察した。今回はまず、自治体の対応について焦点を当てる。

 マイナンバー制度では例えば自治体と年金機構や税務署の間など、団体間での情報共有が必要になるが、当然厳格な安全管理が求められる。「情報連携のため各自治体が中間サーバを設け、国の機関など団体間のやりとりを仲介する形式が採られる。このサーバが緩衝地帯となる」(日立コンサルティング・シニアマネージャーの山口信弥氏)

 とはいえ、マイナンバーの中間サーバといえども、インターネットと無関係というわけにはいかない。特に強力なセキュリティ体制の構築が必須だ。自治体のシステムがウイルスに感染するような事態となれば、国のシステムも無事ではいられなくなり、マイナンバーが流出する危険性も考えられる。

 同制度について「民間企業は人事や給与などの取り扱いが主要なものとなるが、自治体と行政では人々の生活の大きく関わるものが中心となり、地方税をはじめ20~30のシステムを改修しなければならない」(山口氏)。中間サーバのソフトは国が一括開発し、自治体に配布される運びだが、各業務システムとの連携機能は、各自治体側で実装する。

 自治体は基本的に、住民票コードを基盤として生成されるマイナンバーを住民に割り振り、通知する。日程としては2015年10月にすべての住民に対してマイナンバーが通知され、2016年1月以降は住民からの希望があれば、マイナンバーのほか顔写真が印刷された「個人番号カード」を交付する。

 マイナンバー制度は当初、税と社会保障分野に限定して開始されるが、自治体に期待される責務は大きな意味を持つ。自治体は、住民サービスの提供者として、窓口を担っているからだ。

 今回着手される同制度への対応や取り組みは、今後予想される利用範囲の拡大や、いっそうの利便性向上を見込めば、システムの稼働の実現に遅滞は許されないだろう。

 山口氏は「自治体はすでに1年以上前から準備を開始しており、自治体向けのコンサルティングはほぼ終了している。4月からは、具体的なシステム開発に着手できる。自治体、行政側は、絶対に間に合わせなければならないので、ウェブ上で進捗を確認する仕組みさえある」と話す。

 自治体は番号公布などの日程に遅れれば、業務自体に大きく影響するため、大企業に比べても特に切迫感が強いようだ。

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