前回は小売業のデジタリゼーションのトレンドとその重要性、および変革の必要性について確認した。今回は具体的にどのような変革が求められるのか、その方向性について見ていきたい。
前回も確認した通り、消費者は多様化する選択肢の中から自分にとって最も便利な方法で自由に買い物をする傾向が顕著になっている。そうした中、消費者が望んでいるのは既存チャネルと新しいチャネル間が統合、連携されたサービスであり、小売業はうまくやれば消費者との直接の接点と持つという本来のアドバンテージを生かせる可能性は高い。
そうしたアドバンテージを活かすための考え方として、アクセンチュアではシームレスリテイリング(Seamless Retailing)という概念のもと、デジタリゼーションのトレンドの中で小売業が顧客に提供すべき6つの価値を以下のように定義している。
(1)一貫性のある購買体験の提供
実店舗やオンラインチャネル問わず、ブランドや雰囲気などについて一貫性のある購買体験を提供することだ。具体的にはロゴやカラーイメージ、POPなどのフォントの統一など、企業や商品が持つブランドのイメージを損なわないように各チャネルで展開することが求められる。
IKEAはブランドが持つデザインの一貫性を重視しており、実店舗やオンライン、モバイルそれぞれでカラーイメージやフォントを統一するだけでなく、シンプルさというコンセプトも徹底し、モバイルでも見やすく使いやすいデザインを採用している。
米国のキッチン用品店「Williams-Sonoma」では商品が店内で美しくディスプレイされており、家の中をイメージした商品配置など、実際の利用シーンをイメージさせるような陳列がされている。
オンラインやモバイルチャネルでも高級感あふれるイメージはさることながら、単に商品だけの写真を載せるのではなく、実際に料理が盛り付けられている写真や調理中の写真を活用して利用シーンをイメージさせており、一貫性を持った工夫がなされている。
(2)統合された情報の提供
各チャネルでの在庫状況や品揃え、プロモーションなどがどこからでもわかること。また、あるチャネルで途中だった買い物が、そのまま他のチャネルでも継続できる状態を実現することだ。
たとえば、米国の小売業「Target」では、全てのチャネルで在庫状況が把握できるようになっており、実店舗での商品の置き場所もモバイルアプリから確認できるサービスを提供している。
また米国で住宅関連、建設資材を中心に扱う「Home Depot」もリアルタイムの店舗在庫情をオンラインとモバイルから閲覧できるようにしており、実際にオンラインで在庫を確認した顧客の3分の1が48時間以内に来店するという分析結果が出ている。