京大が1人1台PCで中学生徒の「学習ログ」蓄積、MSやNECなど協力

羽野三千世 (編集部)

2015-06-09 07:00

 京都大学 学術情報メディアセンターの美濃導彦教授らの研究グループは、京都市教育委員会、日本マイクロソフト、NECと連携し、中学生の「学習ログ」を蓄積・分析する実証研究「京都ICT教育モデル構築プロジェクト」を開始した。生徒に1人1台のタブレットPCを貸与して、家庭での学習記録や端末使用状況などのログデータを蓄積。「蓄積した学習ログを分析し、何に活用できるのかを研究していく」(美濃氏)とする。生徒1人1人について詳細な学習ログを取得することで、個人適応型(テーラメイド)の学習指導を可能にすることが研究グループの狙いだ。


京都大学 学術情報メディアセンター 教授 美濃導彦氏

 同実証研究では、4月から2016年3月までの期間、京都市立西京高等学校付属中学校の全生徒119人を対象に、家庭での学習ログを収集する。日本マイクロソフトの取りまとめのもと、多くのITベンダーが支援企業として製品を提供していることが同実証研究の特徴だ。

 NECは、Windows 8.1 Pro搭載のタブレットPC「VersaPro J タイプ VT」140台を提供するほか、同実証研究に導入されるITシステム全般の運用保守を担当する。日本マイクロソフトは、学習ログを貯めるストレージをMicrosoft Azureから提供。ログ収集ソフトウェアとしては、オプティムの「Optimal Biz」、大日本印刷(DNP)とゼッタリンクスが共同開発した「Answer Box Creator」、forEstの「まな助」が提供された。

 Optimal Bizは、PCの起動/終了、ユーザーのログオン/ログオフ、アプリケーションの起動/終了、ウェブブラウザの閲覧履歴のログを記録する。このデータにより、生徒の家庭学習におけるタブレットPCの使用状況が把握できる。


タブレットPCからデジタルペンで小テストに解答、採点結果や解答時間、解答順序などの学習ログが記録される

 Answer Box Creatorは、Microsoft Wordで作成した小テストに、生徒がタブレットPCから答えを入力するための解答欄を配置するアドオンソフト。生徒ごとに、解答結果をデジタル採点した結果、解答時間、解答した順序といった学習ログを収集する。また、まな助は、タブレットPCを使わないで行った家庭学習の履歴を、生徒自身で入力して記録するソフトだ。

 各ソフトで収集した学習ログは、生徒の端末から、Azureまたは京都市教育委員会のサーバに吸い上げて蓄積。京都大学で分析、研究を行う。「これらの学習ログが、本当に個別指導に役立つものなのか、どう活用すれば役立つのか、これから研究していく」(美濃氏)

 同プロジェクトを取りまとめる日本マイクロソフトの狙いは、将来的なMicrosoft Azure導入によるマネタイズだ。同社 執行役 常務 パブリックセクター担当の織田浩義氏は「同研究で学習ログを活用することの有用性が示されて、学習ログを蓄積する取り組みが全国に展開した際には、Azureをデータの蓄積、分析基盤として提供していきたい」と説明した。

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