IT活用の地域差解消に大切なこと--ノークリサーチ

NO BUDGET

2015-06-16 07:00

 ノークリサーチは6月15日、主成分分析の手法を用いることによって、中堅・中小企業におけるIT活用の地域別状況を把握・予測する分析事例を発表した。この分析は、同社が発刊する「2015年版中堅・中小企業におけるIT投資の実態と展望レポート」内のデータを活用したもの。


(ノークリサーチ提供)

IT活用が地域差を縮小することもあれば拡大することもある

 上のグラフは、2015年版 中堅・中小企業におけるIT投資の実態と展望レポートの中で、「地域によってIT活用に差が生じている要因として考えられる事柄(複数回答可)」を尋ねた結果をプロットしたもの。

 昨今では人口減少などに起因する地域格差に関する議論が盛んになっているが、「A1.業種による格差があり、地域によって業種に偏りがあるため」が最も高い割合を示していることからもわかるように、人口減少の他にもさまざまな要因が考えられる。また、IT活用は地域格差を縮小する効果が期待できる一方、拡大させる可能性もゼロではない。

 例えば、サテライトオフィスやテレワークは地理的な制約を受けずに業務をこなす環境を提供する一方、地域のIT販社やシステムインテグレーター(SIer)が案件単価の高い大都市圏の顧客を優先する状況を生むことも考えられる。IT活用の地域差を考える上では、こうしたITソリューション導入がもたらす二面性または多面性を踏まえる視点が重要となる。

地域のIT活用に影響を与える様々な要因を整理すべく「新たな軸」を探索

 この二面性・多面性の可能性について、「地域によってIT活用に差が生じている要因として考えられる事柄」を尋ね、主成分分析の手法により地域別にプロットしたのが下のグラフだ。


(ノークリサーチ提供)

 ここではA1~A12の回答割合を地域別に集計した結果から得られる相関係数行列の固有値・固有ベクトルを求める方法によって算出し、そうして得られた「新たな軸」のうちの最初の2つ(「PC1」と「PC2」)を横軸、縦軸とした場合の結果をまとめた。A1~A12の選択肢が「PC1」「PC2」とどのように関連しているか、新たな軸で見たときに各地域がどのような位置付けになっているかを表している。

「IT活用の活性度」と「情報やノウハウの流通量」から各地域の優先事項が見える

 上図において、A1~A12の赤い矢印は各選択肢とPC1・PC2との相対的な相関を表している。つまり、PC1との関係性を見る場合、赤い矢印の横座標がプラスまたはマイナスに大きいものほどPC1との相関が強く、0に近いものほど相関が弱い。比較的高い相関を示している選択肢として、以下の3点が浮上する。

  • A4 IT活用が進んだことで、ビジネスが大都市圏に集中したため(プラス)
  • A7 主要なITベンダーが大都市圏のみに営業所を設けているため(マイナス)
  • A10 地方自治体がITインフラの整備に費やす予算が少ないため(マイナス)

 上記を踏まえると、PC1のマイナス方向は「地域におけるベンダや自治体のIT活用支援が進まない」ことから生じるIT活用の地域差」、プラス方向は冒頭でも述べたような「IT活用が進むことによって逆にビジネスが大都市圏に集中する」という観点からのIT活用の地域差を表していると考えられる。つまり、PC1の軸は「地域におけるIT活用の活性度」という新たな観点で全体を俯瞰したものと捉えることができる。

 同様にPC2との関係性を見る場合には、赤い矢印の縦座標がプラスまたはマイナスに大きいものほどPC2との相関が強くなる。こちらの選択肢は以下の3点となる。

  • A2 交通網の発達で地方と大都市圏の移動が容易になったため(マイナス)
  • A6 地方ではセミナーや展示会が少なく、IT活用を学ぶ機会がないため(プラス)
  • A11 官主導の事業は失敗が多く、地域の財政負担が増すため(プラス)

 PC2のマイナス方向は「地方と大都市圏の間の地理的障壁が低い」ことで生じるIT活用の地域差、プラス方向は「IT活用を成功させるための情報やノウハウが少ない」ことによって生じるIT活用の地域差を表している。つまり、PC2の軸は「IT活用に必要な情報やノウハウの流通量」という新たな観点で全体を俯瞰したものと捉えることができる(ただし、流通量の多少とPC2軸のプラス、マイナスは逆の関係になっている点に注意)。

 最後に、PC1とPC2の意味付けを踏まえた上でIT投資額が大きい首都圏、東海、近畿を除いた7地域を整理すると以下のようになる。


(ノークリサーチ提供)

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