データ分析でスポーツは変わる--岡田武史元日本代表監督が語る夢の大きさ

大河原克行

2015-07-03 14:51

 SAPジャパンは7月1~2日に東京文京区のホテル椿山荘東京でビジネスエグゼクティブ向けイベント「SAP SELECT」を開催。2日目にはスペシャルセッションとして、元サッカー日本代表監督であり、サッカー四国リーグのFC今治のオーナーを2014年11月から務めている岡田武史氏が登場し、「スポーツと変革」をテーマに講演した。

 SAPジャパン バイスプレジデント チーフイノベーションオフィサーの馬場渉氏が聞き役となり、岡田氏が目指すデータを活用したチーム経営やチーム育成などについて触れた。


岡田武史氏
FC今治 オーナー 岡田武史氏

日本で“型”を作りたい

 岡田氏は冒頭、「FC今治のトップパートナーはデロイト トーマツ コンサルティング。その紹介でSAPジャパンの本社に行った。そのときまでSAPという会社がわからなかった。ドイツ代表のデータ分析をしていたことで興味が湧き、その流れでドイツのホッヘンハイムに行った。街全体がSAPであることに驚き、何でこんな大きな会社が四国リーグのチームのビジネスパートナーになったのかと聞いたほどだった」と切り出し、「夢として語っているのは、今治にスマートスタジアムを作ること、そして、日本の“型”をつくり、それを浸透させること」などと述べた。

 岡田氏は、「岡田メソッド」と呼ばれる「型」づくりに取り組んでいる。

 これは、日本人が世界で勝つために育成からトップまで一貫した「型」を意識し、サッカー道における「守破離」を体得、実践していくチームづくりの新しい考え方と位置付けている。全員で同じビジョンを共有しながら個々の発想が生かされるチームを作っていくのが狙いだ。

 岡田氏は「スペイン人のコーチと話をしていたら、あれだけ自由にやっているスペインに、型(プレイモデル)があるという。それに驚いた。スペインでは、その型を16歳までに叩き込んで、そのあとは自由にさせる。だが、日本は逆で、子供のときには“自由のプレーをしなさい”、そして“高校生になったこうやれ”という指導法になる。自由なところにいては自由な発想は出ない。型を知っているからこそ、自由な発想が生まれる。日本の武道でも同じで、最初は型を知るために師匠の教えを守り、それを学んだら、師匠から巣立っていき、自分のやり方で師匠を超えることになる」と語った。

 「岡田メソッドは、日本に最適なプレイモデルを作ることを目指し、同じプレイスタイルでやれるチームを作りたい。そう考え、提案した時には、Jリーグのチームからの誘いの話もあったが、ここまでできあがったチームでは一度潰さなくてはならない。そこで、10年かかってもいいから、いちから作りたいと考え、長年の付き合いがある今治の地を選んだ。だが、株式の50%を持つことを条件とし、“逃げずに覚悟してやれ”と言われた。自分で経営を始めたら、こんなに大変なことはないと感じた。金集めをしなくてはならない。人生の中でこんなに頭下げたことはない。出資してくれるのならば、なんぼでも頭を下げる。いまならば土下座もする。人は変わるものだ」とジョーク交じりに語り、会場を沸かせた。

 FC今治の最初の試合では、約500人しか入れないところに1200人が来場。2日前になってトイレが足りなくなるとわかり、急きょレンタルしたエピソードなども紹介した。

 「地べたに座ってもらいながら試合を観戦してもらった。このときほど、お客さんに心から感謝したことはない。試合の結果は覚えていないほど、お客さんに感激した。お客様あってのサッカーであることが、この歳になってわかった。これまでは、観客のことなんてまったく考えてなかった。“岡ちゃん辞めろ!”と言われるだけだったから。これは商売の原則である。プロ野球の古田(敦也氏)には“今頃わかったのか”と言われた」

 FC今治は、J1、J2、J3、そしてアマチュアのJFLのさらに下にある、地域リーグに所属する。いわば5部ともいえる立場だ。

 「5部から成り上がり、10年後にJ1で優勝を争うチームにしたい。FC今治から日本代表選手が4人生まれれば、日本のサッカーは変わる。そして、8年後には、スマートスタジアムを構築し、今治ラボも設置する。1階には協業しているEXILEのダンススクール、2階にはトレーニングルーム、3階にはSAPによる分析チーム、4階は医療部門。データを蓄積し、日本中のトップアストリートが集まってくる場所にしたい。SAPには無料で入ってもらう。スタジアムでは、空いている駐車場に誘導し、選手の情報が入手でき、飲み物や食べ物、選手のグッズなどを座席にいながら注文でき、食べ物は座席に届き、グッズは家に配送してもらうこともできるようになる」

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