「インメモリをいかに活用するか想像力が問われる」--SAP福田社長、1年を振り返る

山田竜司 (編集部)

2015-08-05 13:08

 SAPジャパンは8月4日、戦略説明会を開催した。代表取締役社長の福田譲氏が就任してからの一年を振り返った。

 SAPは近年、オンプレミスの統合基幹業務システム(ERP)パッケージが中心だったが、ビジネス領域を拡大している。事業の中心だったERP分野の売り上げは現在、全体の4割程度という。2011年から展開しているインメモリデータベース「HANA」などのプラットフォームビジネスで4割程度、SaaS型の人事管理「SuccessFactors」といった、クラウドアプリケーションや経費清算「Concur」などビジネスネットワーク事業などで残り2割を担っている。ビジネスのポートフォリオの拡充に成功し、売り上げも伸長しているとアピールする。


SAPジャパン 代表取締役社長 福田譲氏

 2015年上半期(1~6月)は前年同期と比べて、グローバルではクラウドが92%増、ソフトが6%増、トータルで9%増、日本の場合、クラウドが152%増、ソフトが35%増、トータルで11%増と発表。北米では、すでにクラウドビジネスがオンプレミスを上回る金額といい、ビジネスの構造変化を如実に示している。日本はオンプレミス、クラウドともに堅調であり、ビジネスの伸びからオンプレミスからクラウドへのトランジション(移行)が日本でも順調であるという見解を示した。

 福田氏は2014年の社長就任会見で日本法人のフォーカスエリアとして、Glocalization(グローカライゼーション)、グローバルでのインダストリービジネスユニット、ERPへの再フォーカス、クラウド、HANAプラットフォームの5つを掲げていた。

 グローカライゼーションに関しては営業担当の新入社員全員を6カ月海外研修に行かせてグローバル人材に育成しているほか、開発拠点のドイツ本社やシリコンバレーなどと連携し、国際感覚を養っているとした。

 インダストリービジネスユニット関連では公益事業統括本部と自動車産業統括本部を設置した。ドイツから自動社業界経験者をを4人入れて強化し、日本でのモノのインターネット(Internet of Things:IoT)の活用やIndustry 4.0への展開を支援する協同研究開発施設「Industry4.0 Co-Innovation center」を設立、グローバルでの事例を日本市場に対応させるという。

 ERPに関してはHANAをベースにした業務アプリケーション群「Business Suite 4 SAP HANA(SAP S/4HANA)」を基盤にさまざまなアプリケーションを展開する。

 福田氏が最も注力しているのはHANAであり、データ分析基盤として始まったHANAはトランザクションを処理する機能も装備している。これにより生データをそのまま処理できるため、バッチを考慮せず、リアルタイムな処理が可能になった。「経営会議でも気になった数値があれば、リアルタイムにその数値が何を示すか、深堀りできる」(福田氏)

 さらに、HANAがIoTなどのデータを扱う「未来予測型IT」ヘ進化しているとアピール。HANAの技術コミュニティも盛り上がり、HANAの認定技術者は1000人を超えたという。「(インメモリ活用のための)テクノロジは整ってきており、現在はそのテクノロジをどう使うか想像力が試されている状態」と表現している。

 クラウド分野でも、HANAを基盤としたPaaSやSaaSの展開を強化しており、クラウドビジネスのポートフォリオを拡充している。

 SAPジャパンでは今後、IT主導としたイノベーションを推進、発想をより柔軟にするめのデザイン思考を取り入れるほか、インメモリ技術によって獲得した“速さ”がどのようにビジネスに有効か、経営者に対してもわかりやすく訴求する。これらを進めるための投資を拡大し、人材育成に注力するとした。

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