Fintechの正体

Fintechの正体--金融業界の歴史からの考察

瀧 俊雄

2015-09-01 09:00

 2014年後半以降、Fintech(フィンテック)という用語が金融業界のみならず、一般的なメディアにおいても取り上げられることが増えてきた。Fintechとは、金融(Finance)と技術(Technology)を合わせた造語である。Fintechは従来、金融機関向けシステムベンダーを指す言葉であったが、ここ数年ではその担い手としてベンチャー企業の存在感が際立っている。

 特に、昨今では従来には見られなかったような大規模のベンチャー投資が行われるようになってきている。AccentureとCB Insightsによる統計では、2014年のFintech企業の新規資金調達額は120億ドルとそれまでの3~5倍の規模となったことが注目されている。

 われわれマネーフォワードはFintechプレーヤーとして、220万人が利用する自動家計簿サービス「マネーフォワード」と、40万以上のユーザーを抱える、会計や給与計算、請求書発行といったバックオフィス業務をラクにする「MFクラウド」シリーズを展開してきた。そのような中で、Fintechに関する社会的な注目の高まりの中、金融業界のイノベーションに向けた取り組みが進むのを目の当たりにしてきた。

 本連載では、Fintechを起点に金融業界で起きているさまざまな変化を探るとともに、未来の金融の姿を模索していくこととしたい。また、連載に先立って、最初の2回では、Fintechの全体像と、マネーフォワードの創業経緯にも触れることとする。

新旧Fintech企業の姿に見るトレンド

 まず、表1を見ていただきたい。左側のリストは、米国の金融産業向け専門誌、American Bankerが毎年発行しているFintech企業のランキング である。ここでは、システムベンダーの名前が列挙されており、従来の概念で言えばFintechの担い手はこのような、金融機関に向けて信頼性が高く、専用の高機能パッケージを提供するプレーヤーであった。


 一方で、右側のリストは昨今の海外のFintechプレーヤーとして取り上げられることが多い企業を並べたものである。左側のラインアップと比較すると、ほとんどがユーザーに向けて直接サービスを提供している企業である。また、その領域も家計簿・会計ソフトから資産運用、貸し付け、決済など幅広い。

 後に述べるように、昨今は技術的なフロンティアの担い手としてベンチャーが台頭してきたことから、こちらのリストの方が、より多くの人にとっての「Fintech企業」のイメージに沿うのではないか。

 この2つのイメージの差こそが、昨今のFintechの動向を象徴している。以前は大規模なシステム開発を伴う産業というイメージであったFintechは、ここ数年の技術的なトレンドの中で、より直接サービスを提供するベンチャーというイメージへと主軸が移りつつある。

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