今から取り組む場合の要点整理
すべての事業者でマイナンバーの取り扱いが必須となるにもかかわらず、ここまで周知が遅れてしまったのは、マイナンバー取り扱いのガイドラインとなる特定個人情報保護委員会の「特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン(事業者編)」の公表が2014年12月と遅かったこと、その内容が事業者にとって分かりにくかったことなどをあげる方もいます。
とはいえ、すべての中小企業でマイナンバーの取り扱いは必須であり、10月からはマイナンバーの通知カードの送付も始まります。
すべての中小企業でマイナンバーの取扱は必須
まず、なぜマイナンバーの取り扱いがすべての事業者で必須となるのか、もう一度確認しておきましょう。
通常事業者が従業員を雇用すると「雇用保険被保険者資格取得届」など社会保険関連の資格取得届などを作成しハローワークや健康保険組合などに提出します。
また、従業員へ給与を支払っていますので、年間の給与について年末調整により「給与所得の源泉徴収票」や「給与支払報告書」を作成し税務署などに提出します。また、外部の取引先への支払いのうち不動産の使用料などの支払先が個人であれば、支払調書を作成し税務署に提出します。
2016年1月以降、これらの書類には個人番号欄が追加され、作成する際に従業員本人および扶養親族などのマイナンバーを記載しなければならなくなります。そのために、従業員本人および扶養親族、外部の取引先などのマイナンバーを収集し管理しなければならなくなります。
再確認!対応準備のためのポイント
前回、マイナンバー対応を準備していく上で、最初に確認しておく点をみてきました。再掲すると以下のとおりです。
- マイナンバーを利用しなければならないケースを洗い出すこと
- マイナンバーの利用スケジュールを確認する
- いつまでに従業員などのマイナンバーを収集するか決める
- マイナンバーを収集する前までに安全管理措置を検討し準備する
1および2については、社会保障および税の分野でマイナンバーの記載が必要な書類やマイナンバーの掲載時期を以下の資料から確認し、自社でどの資料にいつから従業員などのマイナンバーを記載しなければならないか確認しましょう。
- 社会保障分野 マイナンバー制度の導入に向けて(雇用保険業務) (健康保険・厚生年金保険関連は平成29年1月から利用開始予定です)
- 税務分野 税務関係書類への番号記載時期
次に、3のマイナンバーの収集時期ですが、基本的にはマイナンバーを記載しなければならない書類の作成時期までに集めればよいことになります。「雇用保険被保険者資格取得届」などは、新たに社員が入社したときに作成、提出しますので、入社時に当該社員からマイナンバーを収集すればよいことになります。
収集ということで課題になるのは、「給与所得の源泉徴収票」のために収集する従業員などのマイナンバーをいつ集めるかが、数も多いため時期や方法など一番考えどころとなるポイントです。「給与所得の源泉徴収票」にマイナンバーの記載が必要となるのは2016年分から、つまり来年の年末調整で作成する際に必要になるわけですが、来年の年末調整時に収集するとなると、マイナンバーの通知カードを失くした人が必ずでてきます。
また、税務関係書類への番号記載時期にもあるとおり、2016年にはいって退職者が出た場合には「退職所得の源泉徴収票」を退職後1カ月以内に作成しなければなりません。収集時期をいつにするかということでは、マイナンバー制度への認知度が進まないなか、上記のように2016年中にも必要となる可能性も考慮すると、マイナンバーの通知カードが従業員などに届きマイナンバー制度への認知が一気に進むと思われる10月中旬から11月下旬にかけての時期が最も収集しやすい時期と考えられます。