デジタル領域で国内ナンバーワンを目指す--アクセンチュア江川新社長

大河原克行

2015-09-30 16:14

 アクセンチュアの代表取締役社長に就任した江川昌史氏が9月29日、社長就任会見を行い、同社の事業方針などについて説明した。


アクセンチュア 代表取締役社長 江川昌史氏

 江川新社長は、同社新年度が始まる2015年9月1日付けで就任。2006年から社長を務めていた程近智氏が取締役会長に就任した。さらに7月から9月にかけて、執行役員として新たに5人を就任させ、体制の若返りを図った。

 江川新社長は、アクセンチュアが取り組む「ストラテジ」「コンサルティング」「デジタル」「テクノロジ」「オペレーション」という5つの領域において、事業を拡大していく姿勢を示す一方で、「なかでもデジタルへのシフトが重要なポイントになる」と強調した。

 「デジタルは、人間の労働力を置き換えるとともに、いままでに経験したことがない体験や価値を創出することができる。アクセンチュアでは、“SMACS”と呼ぶ、ソーシャル、モビリティ、アナリティクス、クラウド、センサを活用したデジタル提案を行っている。既存型の大手小売業において、人の知見だけでは売り上げが停滞していた場合にも、デジタルの力とアナリティクスを活用することで、売り上げを伸ばしている例が出ている」と江川氏。「アクセンチュアは、デジタル領域におけるグローバルトッププレーヤーとして認識されており、全体の20~30%を占めるようになっている。日本でも同様に、デジタル領域におけるナンバーワンプレーヤーを目指す」などと述べた。

 また、「日本の企業において、最大の懸念事項が人不足である。83%の企業が人不足に悩んでいるという調査結果が出ており、調査対象になった世界42カ国において、最も深刻な状況にあることが浮き彫りなっている」と指摘。アクセンチュアはデジタルシフトとBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)によってこの課題を解決していくとした。

ユニクロの全社改革を成功させた実績を持つ

 さらに、「アクセンチュアも人不足に悩んでいるのは同じ。昨年1年間だけで、約1000人を新卒採用と中途採用を行っており、今年もそれに匹敵する規模の採用をしていくことになる。そのためには、ダイバーシティが大切。女性、外国人の採用を積極化したい。そうしなければ乗り切れない。だが、アクセンチュアの職場は体力勝負のところもあり、男臭い職場でもある。カルチャーを変えて、働きやすい環境にすることで、ダイバーシティが実現でき、持続的な成長が可能になる」と、アクセンチュアの社内の風土改革やワークスタイルの変革にも自ら取り組んでいく方針を示した。

 江川氏は、1989年に慶應義塾大学商学部卒業後、同年にアンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア)に入社した。入社から約3年間は、システム系コンサルティング業務を担当。1995年にマネージャーに昇格後、2000年には戦略グループパートナーに就任。2008年4月に製造・流通本部統括本部長、2008年10月に執行役員 製造・流通本部統括本部長を経て、2014年12月に取締役副社長 執行役員に就任、2015年9月に代表取締役社長に就任した。

 これまでは主に、マーケティング戦略立案(CRM)、情報化戦略、営業改革、ITをテコにした業務改革(BPR)に従事してきた。ユニクロを展開するファーストリテイリングの全社改革のほか、商社の海外現地法人における需給調整BPR、食品メーカーのCRM戦略立案、消費財メーカーのチャネル戦略立案および事業立上支援など、多くの実績を持つ。

程社長時代の10年はBPO事業が大幅成長


アクセンチュア 取締役会長 程近智氏

 取締役会長に就任した程氏は、社長時代の約10年間に渡るアクセンチュアの成長に言及。「社長に就任した2006年は、日本におけるアウトソーシングの比率は、わずか15%だったが、これが現在では5割の構成比にまで拡大。日本における社員数は、6000人規模となり、外資系企業としてはトップ10に入る規模になった。また、日本でのビジネスは、この10年で年平均成長率は11.5%となっており、アクセンチュア全体の7~8%の成長率を超えている。アクセンチュアのなかにおける日本のシェアを高めてきた」などとした。

 新社長に江川氏を指名したことについて程氏は、「入社した時から知っている。アクセンチュア社内においては“デジタルの変革のリーダー”ともいえる人物。次の社長として適任だと考えた」としながら、「身体が大きいところもいい。そして、繊細な部分も持つバランスもある」と冗談交じりに評した。

 今後、会長として顧客とのリレーションシップ強化、エコシステムの強化、財界活動などに取り組むほか、人材採用面でも役割を果たしていきたいとした。

 さらに会見では、AccentureのPierre Nanteme(ピエール・ナンテルム)会長 兼 最高経営責任者 (CEO)がビデオメッセージで「江川さんは強い情熱を持って、お客様を成功に導き、社員をリードし、アクセンチュアを、唯一無二の存在へと変えた素晴らしいリーダー。新社長としてさらに優れた手腕を発揮してくれるだろう」などと語った。

新体制の執行役員陣が抱負を語る

 江川新体制の執行役員陣も会見に登壇し、それぞれ抱負を語った。関戸亮司取締役副社長は、江川とは同期入社であり新体制をしっかりとサポートしていくことを宣言。「デジタルシフトとグローバライゼーションが鍵になる。業界横断的な案件、技術にオペレーションを組み合わせた案件が増加している。ビジネスそのものや契約形態も複雑化しており、それに対応できる体制をつくりたい」とした。


江川新社長体制での執行役員メンバー

 デジタルコンサルティング本部・立花良範統括本部長は「デジタルマーケティングを支援するデジタルインタラクティブ、データアナリティクスを担当するアクセンチュアアナリティクス、センサが入ったデバイスを活用してビジネスを変えていくアクセンチュアモビリティの3つの柱から顧客を支援する」とコメント。製造・流通本部・原口貴彰統括本部長は、「デジタルを活用しながら、メカニズムを変えることで、モノをサービス化するなど、日本の企業が世界で勝つために、その強さを生かすことを支援していきたい」と述べた。

 「信頼されるビジネスパートナー、価値のあるビジネスパートナーを目指す。あるべき未来像を描き、積極的に経営に参加し、CEOの戦略的意思決定をサポートしていく」と財務本部のJean-Michel Ferrer本部長。通信・メディア・ハイテク本部の中薮竜也統括本部長は、「ボリュームトゥバリューをキーワードにしたい。製品の先にある価値に重点を置いている企業が日本には少ない。顧客同士をつないで、成果に誇れるエコシステムを構築したい」とし、テクノロジーコンサルティング本部・土居高廣統括本部長は、「顧客視点をテーマにし、業界特化、ニューテクノロジーとレガシーの融合、グローバルで勝てるソリューションを提供していく」と語った。

 さらに、戦略コンサルティング本部・清水新統括本部長は、「グローバル化、デジタル化が企業を大きく変化させようとしている。経営者の信頼性を得ること、スピード感を持って実行し、成功に結び付けることが求められている。そうしたニーズに貢献したい」と述べた。

 会見で司会を務めた同社チーフ・マーケティング・イノベーターの加治慶光氏は、映画「アベンジャーズ」に例えて、江川氏を「キャプテンアメリカ」ならぬ、「キャプテンジャパン」と称し、「たぐいまれな能力を持ったヒーローたちが困難に立ち向かっていくのがアベンジャーズ。そんなイメージでアクセンチュアをみてほしい」とした。

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