エンタープライズIT業界で企業合併が増えているのは、クラウドコンピューティングの台頭によって引き起こされた市場の混乱に対する伝統的な反応だ。しかし、それらの企業が大規模化の恩恵を得る前に、顧客はしばらくの間、それらの戦略的な賭けがうまくいくかを観察する様子見に入る可能性がある。
エンタープライズ業界は動きが速く、昨日の勝者が今日の敗者になったり、大企業の子会社として吸収されたりすることは珍しくない。最近の一連の合併や買収は、投資銀行にとっては歓迎すべきことだろうが、IT製品を購入している顧客にとっては、その結果の様子見をするために、しばらく待つ必要があるかもしれない。
そういったことが重なると、大手エンタープライズベンダーがM&Aの椅子取りゲームを続けている間、企業の意志決定者の決断には大きな遅れが生じてくる可能性がある。
例えば、最近は次のようなことが起こっている。
- DellはEMCを買収する。これは史上最大規模のテクノロジ企業買収となる。
- VMwareはこのDellとEMCの買収契約によってトラッキングストック(業績連動株)となるが、これによって、LenovoやHewlett-Packard(HP)といったパートナー企業と競争関係にあるサーバベンダーの子会社となるため、先行きは不透明だ。
- VMwareとEMCは、「Virtustream」を中心として構築されたクラウドサービス事業を、「Amazon Web Services(AWS)」やMicrosoftの「Azure」との競争を有利に戦うため、スピンアウトさせる。StifelのアナリストBrad Reback氏は、「VMwareは、一方ではプライベートデータセンターソリューション(MicrosoftおよびRed Hat)に、もう一方では超大規模のパブリッククラウドプロバイダー(MicrosoftおよびAWS)の板挟みになって圧迫されつつある」と述べている。
- Western DigitalはSanDiskを190億ドルで買収するが、これは筋が通っている。SanDiskのエンタープライズ市場をターゲットとした計画は、Western Digitalの力を得て大きく加速するだろう。現実問題として、ストレージ市場は急速に整理統合が進んでいる。Western Digitalの最高経営責任者(CEO)Steve Milligan氏は、「合併会社は、急速に進化しつつあるストレージ業界によってもたらされた成長機会をつかむにあたって、理想的な立ち位置を取ることができるだろう」と述べている。
- コンポーネント市場では食物連鎖関係にある企業(IntelとAltera、AvagoとBroadcomなど)が複数合併している。
VMwareは、米国時間10月20日に発表した第3四半期決算報告で弱含みのブッキングについてアナリストから酷評されたが、その際にテクノロジの購買サイクルに対する見解と、今後市場に大きな空白が生じる可能性について言及している。VMwareの最高執行責任者(COO)Carl Eschenbach氏は、軟調なブッキングについての質問に対して、次のように答えている。
私が思うに、現在市場ではVMwareだけでなく業界全体の長期的なシフトが起こっていると見ている。そしてこのために、われわれの顧客は、あらゆる種類の戦略的な取り組みや全般的なテクノロジ関連支出を始める際に、やや慎重になっている。
また、1.5週間ほど前には、VMwareの将来について多くの憶測が飛び交っていた。実際、われわれの将来に何が起こるかについては、不透明なところが多くあった。幸い、DellのEMC買収(または買収の意向)の発表に伴い、VMwareは現在の経営モデルの下で独立企業として存続することが分かっており、今ではこの不透明さはなくなっている。しかしこれは、顧客がVMwareの将来がどのようになるのかにということについて、疑問を持たないということを意味しているわけではない。
また、われわれが経験している最後のポイントは、特に中国、ロシア、ブラジルの経済状況に関するマクロ的課題全般である。当社の状況が、これらの市場で困難に直面しているほかの企業と違っているとは考えていない。また、特に中国市場とロシア市場では、今期も同じことが起きると見ている。