健康経営は健康管理ではない
永岡さんはVOYAGE GROUPの取り組みが健康経営であるという意識はなかったそうです。今回のインタビューの際、健康経営の提唱者、岡田邦夫先生が示している健康経営の考え方、すなわち、「健康経営とは健康管理ではなく、従業員の健康に投資をし、事業のサスティナビリティを実現すること」と伝えたところ、VOYAGE GROUPは健康経営できていると気づいたようです。
健康経営は残念ながら多くの経営者が、健康管理と混同しています。健康経営推進と銘打ったサービスのほとんどが、健康診断に関連するサービスやメタボ対策を打ち出していることもあり、従来の健康管理との違いを理解できないのです。
永岡さん曰く、「健康経営が事業のサスティナビリティを実現するための取り組みであるならば、それは経営上、絶対やったほうがいい」と言います。一方で「経営の現場では、国が推進している云々はあまり関係なく、従業員が健全に仕事ができるかが重要」「健康管理的なメタボの話とかだと、余計なお世話、という感じだし、コストセンターの話になってしまう」と率直な感想をいただきました。
健康投資の成果は、会社の魅力
健康経営が健康管理でないとすると、投資に見合うリターンは何かとよく問われます。実はリターンを数値で図るのは健康管理的な視点のほうがわかりやすいのかもしれません。
なぜならば、肥満率を解消することで、将来の医療費削減への貢献度などを予測することも可能だからです。
もちろん健康経営の土台には健康管理が含まれますが、事業のサスティナビリティーにつながる成果を数値で示すのは難しいと思われます。ただ、採用や離職率など、この会社で働きたいと感じる魅力にかかわるのではないでしょうか。
VOYAGE GROUPの離職率は10%。平均離職率20%と言われるITベンチャーではかなり少ないほうです。また採用においても、一人一人を大事にする取り組みはかなり効果を発揮しているとのこと。
労働人口が減少し、人材不足が企業の危機と言われる時代だからこそ、健康経営の意味はますます価値を持つのではないでしょうか。
次回もIT企業の健康経営の事例をお届けします(「健康経営」はNPO法人健康経営研究会の登録商標です)。
- 石見一女(いわみ かずめ)
- 株式会社Be&Do代表取締役 一般社団法人人と組織の活性化研究会代表理事 オンラインで行動変容を実現する手法と仕組みを開発し提供する事業をおこなっている。その仕組みを用いた自発的な健康増進をもたらすプログラム「健康100日プロジェクト」や健康経営推進ポータル「ウェルビネぷらす」を開発、販売。学習の定着化、オンライントレーニングなどのサービスを提供。