展望2020年のIT企業

デジタルビジネスに賭ける

田中克己

2015-11-26 07:30

 ビジネスにITを融合するデジタル化に成長の活路を求めるIT企業が増えている。ハードやソフトの単体販売が難しくなる一方、請負型システム構築の低迷などが背景にある。

 富士通もそんな1社で、開発したばかりの次世代クラウド基盤「デジタルビジネスプラットフォーム」を戦略商品に位置付けた。加えて、2016年春にパソコンと携帯電話の2つの事業を本体から切り離し、デジタル化を支えるテクノロジーソリューション事業に経営資源を集中する。

富士通がクラウドに注力する理由

 プロダクトの開発・販売とシステム構築、サービスなどからなるテクノロジーソリューション事業は、総売上高の約65%を占める。利益のほとんどを稼ぎ出す。対して、パソコンや携帯電話などのユビキタスソリューション事業と、半導体などのデバイスソリューション事業は厳しい状況にある。コモディティ化した商品の開発・販売競争の激化などで、両事業が赤字に転落した年もある。

 それでも、14年度に総売上高4兆7532億円、営業利益1786億円を維持したのは、テクノロジーソリューション事業によるところが大である。その中で、著しい伸びを見せているのがクラウドビジネスである。年率50%近い成長を遂げており、売り上げは10年度の約500億円から14年度に5倍弱の約2400億円に達した。17年度に約4000億円を見込んでいる。

 クラウドビジネスの成長を支えているのが、デジタルビジネスプラットフォームの構成要素であるビッグデータやモバイル、IoT(モノのインターネット)、AI(人工知能)などになる。グローバルマーケティング部門長でクラウドイニシアチブリーダーを務める阪井洋之執行役員常務は9月末のデジタルビジネス・プラットフォームの記者会見で、クラウドビジネスを強化する施策を発表した。その1つが、オープン技術を駆使したパブリッククラウドK5だ。

 実は、富士通は独自仕様のパブリッククラウドS5を提供しているが、国内のIaaS/PaaS市場におけるシェアはわずか6%である。プライベートクラウドとSaaSのシェアは20%前後なのに対して、パブリッククラウドのシェアをとれないのは「IaaSとPaaSを活用したSIの取り組みが不十分だった」(阪井常務)からだ。プライベートクラウドの獲得に力を入れたことと、既存システムのクラウド移行に消極的だったことも、背景にありそうだ。

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