大企業でもアジャイルになれる--CAがAPIとDevOpsに注力する理由

田中好伸 (編集部)

2015-11-19 19:23

 CA Technologiesは米国時間11月16~20日、米ネバダ州ラスベガスでプライベートイベント「CA World '15」を開催している。今回のテーマは「Business, rewritten by software」。11月18日の基調講演に登壇した最高経営責任者(CEO)のMike Gregoire氏は、「イノベーションを取り込んでビジネスに生かすには、ソフトウェアを利用することが必要」と主張した。

 Gregoire氏は、ソフトウェアで既成の市場に“破壊(ディスラプション)的イノベーション”を起こしたものとして、オンデマンドの配車サービス「Uber」と個人間で部屋を貸し借りするサービス「Airbnb」を挙げた。Gregoire氏によると、Uberの企業価値は、既存のレンタカー大手であるHertzとAvisの合計の4倍という。

Mike Gregoire氏
CA Technologies CEO Mike Gregoire氏

 「Airbnbは、全世界で400万室を貸し借りできるようになっているが、従業員は800人程度。それに対して、SheratonやHiltonなど既存の大手ホテルは70万室を稼働させているが、従業員数はAirbnbの250倍と指摘されている」(Gregoire氏)

 UberとAirbnbの成長は目覚ましいものがあるとするGregoire氏は、こうした「ディスラプションはいつでも起きている」と説明。ただ、「現状に満足してしまうと、あっという間に波に乗り遅れることもある」と注意を促した。

 その代表格として挙げたのが、ネットゲーム「FarmVille」で一躍有名になったZyngaだ。FarmVilleのユーザー数は2年半で1億を突破したが「Facebookは1億ユーザーを集めるのに4年半かかった」(Gregoire氏)ことを考えると、そのスピードは凄まじいと言える。

 だが、Zyngaはモバイル端末に対応したゲームが少ないことから「8カ月で株価が17%下がった」(Gregoire氏)という。Zyngaを取り巻く状況は1年で変わってしまい、Zyngaを辞めてしまった創業者兼CEOが復帰して、立て直さざるを得なかったという実態がある。

 「ディスラプションは終わりなき戦いである」(Gregoire氏)

 Zyngaを見ても分かる通り、現代は状況が凄まじい速度で変わっていってしまう。Gregoire氏は「イノベーションの枠はどんどん短時間のサイクルになっている」と分析してみせた。

 「PCが出現したのは1970年代前半、最初のインターネットブラウザが現れたのは1993年であり、15年が経過した。インターネットブラウザからFacebookまでは9年しかかかっていない」(Gregoire氏)

イノベーションの間隔が短くなっているという
イノベーションの間隔が短くなっているという

 同氏は、破壊的イノベーションの速度は加速されていると説明。最初のスマートフォンの登場は2000年代の中頃だったが、わずか5年でAirbnbに代表されるような「シェアリングエコノミーが現れた」という見方を明らかにした。

APIにフォーカスしてDevOpsを取り入れる

 Gregoire氏はまた、コンピュータの歴史をイノベーションという視点で解説してみせた。一般的に世界で初めてのコンピュータとされる「ENIAC」を動かすのに必要な人員は100人程度とし、ロケットで月に人類を送り込むという偉業を為し遂げたアポロ計画にもコンピュータが活用されているが、計画全体には40万人が携わったとされている。その後に登場したPCが生活や社会を大きく変えたのは、言うまでもないだろう。

 このことからGregoire氏は「イノベーションは民主的になってきていると同時に、その影響は指数関数的に広がっている」と説明する。そうした見方をするGregoire氏は現在を「ソフトウェアの時代」と表現した。ソフトウェアの時代を象徴するものとして掲げたのが、世界中の人材を活用する“クラウドソーシング”であり、「Wikipedia」だ。

 「30万人が参加するWikipediaは内容が非常に早くアップデートされる。オープンソースソフトウェア(OSS)も同様に素早くアップデートされる。これは“モブアプローチ”と言ってもいいかもしれない。PtoPをベースにするシェアリングエコノミーは、発明のやり方がこれまでとは異なっていることを示している」(Gregoire氏)

 ソフトウェアの時代に企業が成功を収めるために必要なものとしてGregoire氏は「まずはAPIにフォーカスしてDevOpsを取り入れて、セキュリティに投資すること」を挙げている。こうした施策を進めることで経済環境の目まぐるしい変化にも「俊敏(アジャイル)に対応できるようになる」と解説した。

 APIは、公開されているサービス同士をつなげることでサービスの利便性を高めることができる。「旅行関連情報を提供するExpediaの売り上げの90%はAPIと言われている」が、APIの有用性についてGregoire氏は、「ウェブができてはじめてインターネットの可能性が見えてきた。(経営誌)『Harvard Business Review』はAPIのない企業はウェブのないインターネットのようだと評している」と解説した。

 開発チームと運用チームが連携するDevOpsがもたらすメリットとして同氏は「スピードが重要とされる現在はイノベーションも速さが求められるようになっている」と表現。McKinseyの調査結果から「DevOpsは(企画してから市場に投入するまでの時間である)タイムトゥマーケットを、例えば100だったものを17にすることができる」ことを挙げた。

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