三国大洋のスクラップブック

米規制当局の死角だったテスラの「オートパイロット機能ベータ版」リリース

三国大洋

2015-12-01 06:15

 以前の記事の最後に、「よくもこんなものに各国の規制当局がOKを出したものだ」云々と書いた。実はあれが、少なくとも米国では当局の許可を得ていなかったという話を目にして、ちょっと驚いた。今回はこの話を簡単に紹介する。

 今週初めのTesla決算発表のなかで、最高経営責任者(CEO)のElon Muskが「Model Sのオーナーが馬鹿げた真似をする可能性を最小限にとどめるために、オートパイロット機能の利用にもう少し制約を加える措置を講じるつもりでいる」などと述べていた(*1)。「馬鹿げた真似(”crazy things”)」というのは、以前に紹介したビデオのなかに映っていたもの――「運転中に新聞を読む」といった行為のこと。

 いまのところ、あのオートパイロット機能絡みの事故は生じていないそうだが、Muskとしても「ああしたものが先に流布してしまっては…(折角の試みが不本意な結果につながりかねない)」と思っていたのかもしれない。

 Teslaが具体的にどんな「制約」を追加することになるのかといった点についてはまだ明らかではない。この話を紹介したThe Vergeではそう記しながら、すでに一部の車両に実装されている手放し運転を抑制する仕組み――ドライバーが一定時間(数秒間)以上ハンドルから手を離しているのを検知すると、システム側で走行車線をキープする機能を自動的に解除してしまう、といったやり方なら簡単に適用できそうなどと指摘している。

 いずれにしても、Teslaはまたネットワーク(OTA、over-the-air)経由でマイナーアップデートを配布して対処することになるのだろう。

後手に回る米規制当局の対応

 「こりゃあ、ちょっとまずかったかも…」とメーカー側でも考えるようなものを、そもそもTeslaはどうしてリリースできてしまったのか。

 The Vergeは、この疑問に対する答えをみつけるべく、幾人かの関係者に話を聞き、そして「TeslaはModel Sのソフトウェアアップデート配布に際して、米規制当局の許可などとっていなかった」――もう少し正確に書くと、「米国の現行のルールでは許可を取る必要すらなかった」という答えに行き当たったという(*2)。

 米NHTSA(国家道路交通安全局)というと、最近では例の「タカタのエアバッグ問題」で日本のニュースでもよく名前を見聞きする官庁(米運輸省の部門)だが、The Vergeによるとこのお役所の監督対象には「ソフトウェア(ベースの)機能("feature")は含まれていない」――現行のルールではソフトウェア機能は「自動開閉するドアやトランクと同類」の扱いで、メーカー側はいちいちNHTSAから許可を取らなくても新しい機能を追加できてしまうという。

 この記事には、「自動車のほかの機能の場合と同様、メーカーはソフトウェアベースの機能を自由に提供できる。ただし、欠陥が見つかった場合にはNHTSAがリコールを命じる可能性もある」という同局広報者のコメントが引用されている。また「NHTSAでは現在、ソフトウェアや自動車の電子機器全般に関連して、新たな規準を追加する必要があるかどうかを評価・検討している」というコメントもある。

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