パートナーとの関係にも影響か--ベリタスが進めるクラウド戦略の行方

鈴木恭子

2015-12-16 08:00

 2014年10月にSymantecは2005年に買収したVeritasとの事業分社化を発表した。2015年10月にSymantecのセキュリティ事業とVeritasの情報管理事業を完全分割。Veritasは「Veritas Technologies」として、2016年1月から非上場企業となる。

 分割が開始された2015年4月以降、Veritas幹部は“新生Veritas”の方向性とその戦略について、情報を発信し続けている(「データではなく情報のレベルで管理」:分社化後を見据えるベリタスの戦略)。米国をはじめ、欧州、日本を含むアジア太平洋地域(APJ)のパートナー企業を対象に分社後の事業戦略に関する説明会も積極的に開催している。その背景には、分社による影響を説明すると同時に、パートナー企業に今後の販売戦略の見直しを求める意図があるようだ。その理由は、Veritasのクラウド戦略である。

「クラウドファースト」のアプローチにシフト

 Veritasでは分社後の事業戦略の柱として、「情報の可用性(Availability)」と「情報に対する洞察(Insight)」を掲げている。企業が抱えるデータ量は増加の一途を辿っているが、ユーザー企業は「どの情報をどこに保管しているのか」を正しく管理できていない。情報のガバナンスはもちろん、保存している情報の内容までを把握し、ビジネスの意志決定に活用できなければ、データは単なる“ストレージのお荷物”となる。

Veritas APJ担当営業責任者 Chris Lin氏
Veritas APJ担当営業責任者 Chris Lin氏
Veritas CMO Ben Gibson氏
Veritas CMO Ben Gibson氏

 VeritasでAPJを担当する営業責任者を務めるChris Lin氏は、「データ量と情報資産の価値は比例しない。単なる『データ』と整理された『情報』は別物だ」と語る。

 Veritasは製品ポートフォリオを「バックアップ/リカバリ」「ビジネス継続性」「災害対策」「ストレージ管理」「アーカイブ」「e-ディスカバリ」「ファイルガバナンス」の7つのカテゴリに配している。

 その中でも主力バックアップ製品の最新版である「NetBackup 7.7」では、Amazon Web Services(AWS)、Google、Hitachi Data Systems(HDS)、Verizon、Cloudianなどが提供するクラウドストレージサービスへのバックアップ機能を大幅に強化した。同時に、ハイパーバイザのVMware vSphereやMicrosoft Hyper-Vとの連携も強化している。

 これまでVeritasはメールアーカイブサービスの「EV.cloud」など一部のクラウドサービスを提供していたものの、積極的なクラウド環境への対応はアピールしていなかった。

 しかし、Veritasで最高マーケティング責任者(CMO)を務めるBen Gibson氏は、「クラウドはIaaSからSaaSまでをオンデマンドで必要に応じて提供するもの。何をクラウド環境で運用するのかしないのかは顧客が決めることだが、(クラウドは)コストの観点からもメリットがある。AWSが急成長したのも、その破壊的なコストが一因になっていることは否めない」とニーズの高まりから今後のクラウド対応は必須であることを強調する。

 2014年10月に分社化が発表されて以降、Veritasはクラウド対応強化製品を矢継ぎ早に発表している。2015年中にリリースが予定されている「Veritas Information Map」は、非構造データのメタデータをクラウドで管理し、アクセス順位やデータロケーションを可視化する。また「Veritas Resiliency Platform」は、プライベート、パブリック、ハイブリッドの各クラウド環境のバックアップの自動化を支援する。

 Veritasによると、すでに顧客の44%がオンプレミス、プライベートクラウド、パブリッククラウドを併用するハイブリッドクラウド環境を運用しているという。Gibson氏は「今後、ハイブリッドクラウドが主流になるのは明白だ。われわれは(Veritasが有する)技術をすべてクラウド対応する『クラウドファースト』のアプローチを取る」と語る。

ハイブリッドクラウドでも情報を一元管理

 Veritasは、オンプレミス環境からクラウド環境への移行を「クラウドレディ」「クラウドファースト」「クラウドユニファイド」の3段階に分けている。

クラウドレディ、クラウドファースト、クラウドユニファイドの移行段階。今後はクラウドファーストとクラウドユニファイドに注力していくという
クラウドレディ、クラウドファースト、クラウドユニファイドの移行段階。今後はクラウドファーストとクラウドユニファイドに注力していくという

 クラウドレディは現在オンプレミス環境で稼働しているソフトウェアをクラウド対応にすることを指す。例えば、バックアップワークロードをテープからディスクに移し、さらにクラウド環境に移行するといった具合だ。同社は、クラウドアーカイブ技術に対する投資を今後も継続していく方針を明確にしている。

 クラウドファーストは、Information MapやResiliency Platformといったクラウドでのデータ管理ツールを利用し、情報管理を“as a Service”として利用する発想である。具体的にはメタデータを活用して情報をマッピングし、その重要度を理解する。そして、それに応じてポリシーを策定し、管理するという手法だ。コンテキストを理解し、情報を文脈に応じて分離すれば、ガバナンスの強化にも役立つ。

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