より賢く活用するためのOSS最新動向

ここでも「火花」がブレイク--2015年のOSS動向総括

吉田行男

2015-12-25 09:43

 こんにちは、日立ソリューションズの吉田です。今回は、12月ということで今年1年のOSS業界での動きを総括したいと思います。

(1)OpenStackの盛り上がり

 今年一番の話題は、なんといってもOpenStack Summitが東京で開催されたことでしょう。世界中から5000人を超える技術者が集まったITイベントは、過去にもそんなに例がなかったと思います。しかも、参加者の20%程度が日本人で、それ以外は海外からの来訪者だったのも画期的なことだと思います。

 2015年の国内のOpenStackエコシステムは、前年比2.5倍の20億4500万円規模とIDCが予測を発表しています。OpenStackエコシステム市場の中には、企業や組織がOpenStackを使用してクラウド基盤を構築するために投資するハードウェア(サーバ、ストレージ、ネットワーク機器など)、ソフトウェア(OpenStackディストリビューション、OS、仮想化ソフトウェアなど)、プロフェッショナルサービス(コンサルティング、システム構築/開発など)の金額が含まれています。


OpenStack Summit Tokyo 2015の展示会場の様子

 OpenStackの導入に関しては、高度な技術力が必要とされるためまだまだハードルが高い状態ですが、先進的な事例に影響されてエンジニアが増えていけば、このような課題も徐々に乗り越えていくことでしょう。ともあれ、ITベンダーは、早期にOpenStackの実績を積みノウハウを習得することが、確実に市場機会の獲得するために重要になってきます。

 既に大手のベンダーは、OpenStackを活用したクラウド基盤ソリューションを発表しています。そのなかでも、NECは、Red HatのOpenStackを採用し、管理・監視など不足する機能をOSSで補っているのが特徴です。どの顧客にも共通する要件、約2000項目のうち、OpenStackで実現できるのは3割程度で、残りの7割は、OpenStackの改造と、ほかのOSSとの連携によって対応しているそうです。ただし、改造している部分も独自仕様にはせず、できるだけコミュニティにコントリビュートし、標準化を推進しているようです。

  • レッドハットとNEC、NFVを共同開発--OpenStack上でキャリアグレード
  •  一方、富士通も2月にグループ国内外すべての社内システムを次世代クラウド基盤へ刷新すると発表しました。約640のシステム(サーバ数:約1万3000台)が対象で、移行先は現在OpenStackをベースに開発中です。2月から順次移行し、今後5年間で完了する予定で、約350億円のTCO削減を目指しています。

     また、富士通は5月12日、新たなパブリッククラウドサービス「K5」をはじめ、プライベートクラウド構築用のソフトウェアや垂直統合型商品「PRIMEFLEX for Cloud」、マルチクラウド統合管理商品、マルチクラウドとの接続サービスを発表しました。最大の注目点は、IaaS構築用ソフト「OpenStack」やPaaS構築用ソフト「Cloud Foundry」といったOSSに基づくオープン技術を採用していることです。

     海外では、OpenStackベンダーの買収が相次いでおり、米Cisco Systemsが「Piston」を、米IBMが「Blue Box」を買収しています。また、米Oracleは倒産したベンダーのエンジニアチームを吸収しました。急速にOpenStackがプライベートクラウド構築の基盤としての標準となりつつある一方で、OpenStackの全体像を把握し、構築や運用ができるエンジニアは限られています。各社は自らの地位を確立するため、買収によって製品とエンジニアをまとめて調達したということでしょう。

     このような技術不足という状況に対して、LPI-Japanは9月に特定のベンダーに偏らないOpenStack技術者認定試験を開始しました。今後のOpenStackの普及を後押しするために技術者の育成はとても重要です。

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