未来へのマイルストーン--2015年のAI、ロボット、IoT関連政策を振り返る

林 雅之

2015-12-31 08:23

 政府のAI(人工知能)やロボット、自動走行車、IoT(モノのインターネット)関連政策において、大きな進展があった年となった2015年。政府の関連政策をとりあげながら2015年の取り組みを振り返る。

 11月5日、総理大臣官邸で第2回「未来投資に向けた官民対話」が開催された。

 安倍首相は「2020年オリンピック・パラリンピックでの無人自動走行による移動サービスや、高速道路での自動運転が可能にする」「早ければ3年以内に、ドローンを使った荷物配送を可能とすることを目指す」「3年以内に、人工知能を活用した医療診断支援システムを医療の現場で活用できるようにする」などとコメントした。

 自動走行車やドローンやAIが、ものづくり、金融、農業といった、幅広い分野で社会生活、産業構造を変革する力を持ち、政府の次の戦略に反映していくよう対応を進めている。

 AIやロボット、ドローン、自動走行車、IoTの5つのテーマごとに、政府の具体的な取り組みを紹介する。

AIに代表されるインテリジェントICTによる人間社会の変化

 総務省は2015年6月、「インテリジェント化が加速するICTの未来像に関する研究会」報告書を公表した。

 総務省はAIに代表されるICT(情報通信技術)分野の急速な進展により、従来人間だけが担ってきた頭脳労働(認知、判断、創造)について、人間が機械の支援を受けたり、機械がその一部または全部を代替する結果、人間社会の大きな変化が予想されると指摘。このような技術革新を「ICTインテリジェント化」、それを支える技術やシステムの総体を「インテリジェントICT」と定義。また、この報告書では未来の社会像についても言及している。

 例えば、弁護士事務所の判例探索、医療分野の症例検索、保険の審査といったように、単独でその知識量や速い探索速度などを利用し、人間の業務の軽減や代替を刷るとしている。さらには、高い精度の予測が可能となり、経営判断や生産性向上、商品開発など企業の意思決定の支援が進むようになると予測している。

 また、交通や物流、オフィス業務、生活環境の自動調和などの社会全体を包みこむような支援が可能となり、ネットワーク上に多種多様なAIが出現する可能性を指摘。中には異なる専門的能力を持った複数のAIを融合する能力を持つAIもあらわれ、それらの連携や協調が進む点も指摘している。

 そして、人間とロボットがリアルタイムに情報を共有し、協働することで問題を解決するなど、人間は周囲の環境とネットワークを介してロボットとつながり、自身の取り巻く環境が自動的に制御され、秩序だった状態になる。高度なAIが時には有能な執事のように、時には家族のようにその生活に加わるようになるという未来像を描いている。

 これらの未来社会には、世界経済や雇用にも大きな影響を与えるとし、雇用の代替が進み、新規雇用が創出されるとしている。

 総務省では、インテリジェントICTが社会に浸透し、人間の行動や思考形態が変化することを踏まえて、教育や労働などにおいて共存を前提とした社会設計をしていくことの重要性を挙げている。

 経済産業省関連では、国立研究開発法人 産業技術総合研究所が5月、「人工知能研究センター」の新設を発表した。国内外の大学、企業、公的機関と連携し、ビッグデータを活用しながら先進的なAI技術の研究・開発を推進している。産総研では、人工知能研究センターを国内のトップ研究者の人材交流の場や、民間企業との連携を促すハブとしての役割を担うことを目指している。

 文部科学省関連では2016年に、理化学研究所に人工知能をはじめとした統合研究開発拠点「AIP(Advanced IntegratedIntelligence Platform Project)センター」を新設する予定だ。


出所:文部科学省 平成28年度予算概算要求の概要 2015.8

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