Fintechの正体

「Fintechイヤー」だった2015年(後編)

瀧 俊雄

2015-12-28 07:30

 2015年は日本の金融界にとって、Fintech元年と呼ぶにふさわしい展開を見せた1年であった。この1年を振り返るにあたり、前編では主に国内のFintechの動きをまとめた。後編では、海外の動きと一連の動きが意味することを解説する。

海外におけるFintechのさらなる展開

 海外でのFintech市場は、日本に先行して2014年頃から盛り上がりをみせていた。そのような中、主要なマーケットにおいて従来のビジネスモデルの検証フェーズから、本格的な展開といえる動きが見られている。その中でも顕著であった米国と英国の動きを以下に取り上げる。

(1)米国市場:個別プレーヤーの価値が明らかとなった1年

 米国市場では、1月にはCoinbase(ビットコイン取引所)が7500万ドル、2月にはBetterment(ロボアドバイザー)が6000万ドル、4月にはAcorns(貯蓄・投資アプリ)が2300万ドル、5月にはRonbinhood(株式取引アプリ)が5000万ドル、8月にはSoFi(P2Pレンディング)が10億ドルといった未然のスケールで大型調達を続けた。

 買収面ではLearnVest(3月)やYodlee(8月)、BillGuard(9月)といった、個人の資産管理(PFM)プレーヤーたちが相次いで買収を受けた点も特徴的である。従来の調達フェーズから、優良な集客チャネルであったり、技術要素といった側面が評価されて、既存の金融サービスのエコシステムに取り込まれていく一面が明らかとなった。

 また、年末にはユニコーン企業として長年見られてきたSquareの上場が行われた。前年末に上場したLending Clubの株価低迷もあり、同上場でも公開価格の設定などが議論を呼んだ背景があったが、Squareは結果としては公募価格を上回る上場を果たし、その後も株価は同様の水準で推移している。

 上記の買収とも合わせて、世界的にもベンチャーへの過熱感が取り沙汰されてきた中で、未公開マーケットの中でヴェールに包まれてきた企業価値が、市場によって明らかにされてきた一年であったともいえる。

(2)英国の動向:送金業の拡大と国策化するFintech

 英国市場では、大型調達という観点では国際送金を得意とするプレーヤーの拡大が目立った。大型ディールとしては1月にTransferwiseが5800万ドルを、2月にWorldRemitが1億ドルの調達を行ったほか、10月にはWorldpayがIPO時に72億ドルの時価総額をつけるといった動向がみられた。

 また、7月にはAtom Bankが銀行業としての新規開業免許を取得し、開業準備へと入った。同行はウェブサイトすら持たない"アプリ銀行"としての業態を標ぼうしている。


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