海外コメンタリー

「音声」というビッグデータがもたらすビジネスチャンス

Mary Shacklett (Special to TechRepublic) 翻訳校正: 村上雅章 野崎裕子

2016-01-18 06:00

 カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)のAlbert Mehrabian教授が1971年に上梓した書籍「Silent Messages(邦題:非言語コミュニケーション)」には、非言語コミュニケーションに関する同氏の研究成果が記されている。Mehrabian氏の結論によると、営業担当者と見込み客が対面でやり取りする場合、見込み客に伝わる内容のうち言葉(言語)によるものがわずか7%である反面、ボディランゲージ(視覚)によるものは55%、声のトーンや口調(聴覚)によるものは38%だったという。


提供:iStock

 同書籍の出版以来、この知見に反論する人々と、その内容をより洗練させようとする人々が出てきている。とはいえ、いずれの側も、言語によるコミュニケーションでは、語った内容以外の情報が伝わるという点に同意している。

 ビッグデータという観点から見た場合、この事実は見逃せない。というのも音声という情報は、アナリティクスの揺籃期においてはこれまで扱われることのなかったデータであるためだ。ここで、企業や組織は音声をアナリティクス対象に含めていないが故に、ビジネスチャンスを逃しているのではないかという疑問が首をもたげてくる。その答えはイエスだ。

ケーススタディ--その1

 トルコの大手金融機関であるŞekerbankは、電話対応センターのDesmer İletişimに委託している顧客対応のレベルを向上させたいと望んでいたが、日々かかってくる電話のすべてを手作業で正確に分析する手段を持ち合わせていなかった。また同行は、顧客対応に問題がある場合、顧客満足度や、企業イメージ全体に悪影響が及ぶことも認識していた。

 このため同行は、音声をテキストに変換するテクノロジの導入を決定し、顧客との電話の内容をデジタルデータに変換し、その分析を通じて根本的な問題や、隠された洞察を洗い出せるようにした。また感情検出ソフトウェアも導入し、顧客が不満を感じたやり取りを、怒りや単調さ、割り込み、沈黙といった評価基準で数値化して分析することで、問題のある会話に関する重要な知見を得ようとした。

 テキスト化された内容に対して文章解析や感情分析を実施し、さまざまなデータマイニング手法を適用した結果、同行はコールセンターの運用効率や、担当者のパフォーマンス、顧客満足度に関する貴重な洞察を得ることができた。こうした分析作業により、コールセンターの運用コストの削減や、コールセンター全体の作業時間の低減、初回コールでの解決率の向上がもたらされたのだ。また同行は、実施したマーケティング活動に対する顧客の反応や、競合他社の取り組みをも評価できるようになった。

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