SDN座談会(1):運用管理のあり方を変えるSDNは適材適所で考えるべき

吉澤亨史 田中好伸 (編集部) 山田竜司 (編集部)

2016-01-26 07:00

 ネットワークをより柔軟にできるというSoftware-Defined Networking(SDN)に注目が集まっている。SDNを実際に導入するユーザー企業も見られるようになっている。ネットワークをソフトウェアで制御することで何が変わるのか。SDNに関連した製品やサービスを手掛けるベンダー5社に集まってもらい、SDNを取り巻く現状と未来を見通した。参加したのは以下の5人。

  • 日本IBM グローバル・テクノロジー・サービス事業本部 サービス・デリバリー 技術理事 ディスティングイッシュド・エンジニア 山下克司氏
  • シスコシステムズ システムエンジニアリング SDN応用技術室 テクニカルソリューションズアーキテクト 生田和正氏
  • インターネットイニシアティブ(IIJ) サービス推進本部 サービス推進部長 林賢一郎氏
  • NEC スマートネットワーク事業部 マネージャー 勝浦啓太氏
  • ネットワンシステムズ ビジネス推進本部 第2応用技術部 クラウドソフトウェアチーム シニアマネージャー 藤田雄介氏

何がボトルネックか気付かない

――ユーザー企業はSDNをどう捉えているのか、どのような課題を解決するためにSDNを選択したのか、実際に導入したユーザー企業の声でも構いませんので、そこから聞きたいと思います。

藤田氏 現場の担当者と統括する側で観点が異なると思います。まず現場の担当者ですが、深夜作業が多い、変更作業が多いという問題があります。ネットワークというのは「既存のシステムに影響を与えたくない」「安定稼働が最高」という考え方がありますので、何かを追加しようとすると、物理的に分けて追加したり増設したりしていくという考え方がありました。そうすると、追加する度に複雑になっていくことになってしまい、結局は変更作業、深夜作業が増えるというルーチンに陥ってしまいます。

 プライベートクラウドや仮想化環境を作られていますが、クラウドであるにもかかわらずパラメータシートや設計情報で個別にやり取りしているケースも多くみられます。一つの要因として、ネットワークの構成変更に時間がかかるため、結果的に全体的な環境デプロイに時間がかかってしまう現実もあり、例えば、ネットワーク接続に5日かかってしまうとなると、パラメータシートでやり取りしても大きく時間は変わらないということですね。

藤田雄介氏
ネットワンシステムズ ビジネス推進本部 第2応用技術部 クラウドソフトウェアチーム シニアマネージャー 藤田雄介氏

 セキュリティの問題もあります。「セキュリティを高めろ」と言われても、何をしようかということになってしまう。こういった課題に対してSDNが貢献できるという観点がリンクできてないという印象もあります。

 一方、統括している立場の方は、全体としてコストの最適化、それと運用負荷の低減が課題としてあります。そういった観点から、実はボトルネックの一部がネットワークにあるのではないかと考えられている方も多いように思います。

 このため、トップダウンで「SDNを入れましょう」という方向性を持たれるお客さまも多いのですが、ネットワークの担当者はその理由がわからない。中には、自身が担当するネットワークがボトルネックになっていることに気付いていない担当者の方もいます。

 全体を鑑みれば、ネットワークがボトルネックになっているというのは見えてきます。ネットワンの顧客としては、データセンターを利用し、なおかつ、ある程度の規模感でクラウド基盤を持っているお客さまが多いので、やはりデータセンターに対するSDNというところで主に取り組んでいます。

 ネットワンが扱っているのは、「Cisco ACI(Application Centric Infrastructure)」と「VMware NSX」、スタートアップ企業のBig Switch Networkが開発する「Big Cloud Fabric」。大きくこの3つになります。これらの製品を検討しているお客さまの目的としては、先ほど言った「データセンターの中のネットワークをシンプルにしたい」「クラウドにSDNを投入して全体的に迅速性を向上する」「セキュリティの向上」というのが多くなっています。

オーバレイに期待

山下氏 藤田さんが言われたSDNの展開は、IBMも同じ状況です。IBMはVMwareのようなハイパーバイザよりもう少し上位層からクラウドを作っていきたいというビジョンを持っています。しかし、現実には企業のクラウドへの取り組みはVMwareによる仮想化レベルで止まっているケースも多いです。お客さまとしては「クラウドを採用して、インフラを速く動かしていきたい」という思いがある中で、やはり仮想化からクラウドに至る最後のコーナーストーン(障害物)はネットワークだということが見えてきています。

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