マイナンバーや軽減税率などからITに投資--2016年は「変化の激しい年」

大河原克行

2016-01-26 16:46

 一般社団法人の日本コンピュータシステム販売店協会(JCSSA)は1月25日、東京・内幸町の帝国ホテルで新春特別セミナー・賀詞交歓会を開催した。社団法人となって20年目の節目を迎えるということもあり、会場には、600人以上の業界関係者が参加。過去最高の参加者数になったという。

 JCSSA会長の大塚裕司氏(大塚商会 代表取締役社長)は、「社団化して20年を迎えられたことを皆さんに感謝する。“清く、正しく、貧しく”がJCSSAのモットー。20周年という節目となっても、何も用意できないが、協会のホームページにはさまざまな資料を集めて公開していきたい」とジョークを交えながら、周年企画を検討していることを示した。

大塚商会 代表取締役社長 大塚裕司氏
大塚商会 代表取締役社長 大塚裕司氏

 大塚氏は市場環境について「PCは、前年割れの状況が続いており、2015年、PCはもう終わってしまったという風潮すらあった。2015年1~3月は2014年のWindows XP特需と、消費増税前の駆け込み需要の反動があったため落ち込んだが、4月以降は持ち直してきている」と言及した。

 「当社(大塚商会)の例でも、2015年9月からPCの販売台数が前年を上回ってきた。10~12月には、前年同期比13%増となっている。タブレットについても、業務利用が増え、今後も伸長すると見込まれるが、その一方で、PCとタブレットは用途が違うということも浸透していくことになるだろう。つまり、クライアントPCはなくならない。その上にタブレットの需要が乗っかることになるだろう」

 続けて大塚氏は「Windows 10の無償アップグレード期間が今年夏に切れるため、その前後でも何かが起こると考えられる。また、SQL Server 2005のサポート終了も4月12日に迎えることになる。そのほかにもマイナンバーや軽減税率の導入に伴い、IT投資を行わなくてはならない企業がたくさんある」と今後を見通した。

 「マイナンバーにあわせて、ただ単に対応するだけでは、それは経費になるだけである。それに伴って作られたセキュアなインフラを生かして、タブレットなどの他の機器とネットワーク化し、生産性を上げていくという提案ができれば、経費ではなく、強い会社になるための前向きなIT投資になる。今年のように変化が激しい年には、IT業界は日本企業の裏方役として、あるいは中小企業を元気にするお手伝いをしていきたい。エンドユーザーに一番近い団体として、これからの課題を解決していく役割を担いたい」(大塚氏)

経済産業省 商務情報政策局 地域情報化人材育成推進室長 小池雅行氏
経済産業省 商務情報政策局 地域情報化人材育成推進室長 小池雅行氏

未年はもうマトン、申年は悪いことが去る

 来賓祝辞として登壇した経済産業省 商務情報政策局 地域情報化人材育成推進室長の小池雅行氏は、「緊張を解きたい」と言いながら、ラグビー日本代表・五郎丸歩選手の真似をして会場を沸かした後で、「未(ひつじ)年の2015年は辛抱しすぎて、もうマトン(待てん)という人が多い。ウール(売る)、ウール(売る)の攻めのIT経営で行きましょうと言ってきた」と駄洒落で挨拶。「IoT、ビッグデータ、AI(人工知能)のすべてがこの業界に関連する。この業界の努力が日本の経済に直結する」とコメントした。

 さらに小池氏は「申(さる)年の2016年は、2015年よりも勝る(サル)年であり、悪いことが去る(サル)年にし、そして、モンキー(本気)でモンキー(文句)のないウッキウッキ(ウキウキ)の年にしてもらいたい」と駄洒落で締めくくり、会場を笑いの渦とした。

富士通 代表取締役会長 山本正已氏
富士通 代表取締役会長 山本正已氏

 小池氏の挨拶を受けて、富士通の代表取締役会長である山本正已氏は、「経済産業省も大きく変わった」と語り、会場を大きく湧かした後、「JCSSAは、社団化20周年を迎え、業界に定着した団体になった」と祝いの言葉を述べた。

 山本氏は、「申年は果実が実る年であるといわれる。さらに、新たなことが始まる年だともいわれる。今から48年前には郵便番号制度が始まったが、2016年はマイナンバー制度が始まっている。ICT産業においても、IoTやビッグデータ、AIの言葉を新聞で見ない日はなく、デジタル革命、第4次産業革命といわれる状況が訪れている」と現状を解説した。

 「テクノロジは重要だが、そこにさまざまな人たちのアイデアとノウハウが結集しなくてはうまくいかない。グローバル競争の中で新たな知恵が生まれ、一歩でも早く、ビジネスモデル化した人が勝つ世界がやってくる。ぜひ、これが日本発で生まれることを期待したい。そのためには、民の力だけでなく、官の力も必要である」(山本氏)

豆蔵ホールディングス 代表取締役社長 荻原紀男氏
豆蔵ホールディングス 代表取締役社長 荻原紀男氏

 乾杯の音頭を取った一般社団法人コンピュータソフトウェア協会会長の荻原紀男氏(豆蔵ホールディングス 代表取締役社長)は、「私の今年のテーマは、日本を二度と敗戦国にしないことだ」と切り出し、「IoT時代になり、ソフトウェアが中心の世界になると、先進国でも新興国でも差がなくなり、メカにエレキをくっつけてしまえばすばらしい製品ができるようになる。日本はさらなる競争に巻き込まれることになり、20年、30年先の世界が不安定になる。このままでは、日本の成長が保てなくなる時期がくる」と語った。

 「それを回避するためには、将来を担う子供たちを育てなくてはならない。だが、学校にはほとんどPCがない、ネットワークがない。GDPに占める教育予算は3%しかない。こんなことでは日本は絶対に負けてしまう。日本IT団体連盟の取り組みを開始しているが、そこに200近い団体に参加してもらうことで、その活動を通じて、子どもたちにPCを一人ひとりに持たせて、ネットワークを敷き、デジタル教育を行い、貧富の格差や地域間格差をなくすための運動を始めていきたい。未来の子供たちを育てたいと考えている。そして法律や規制を変えていくことも必要だ」(荻原氏)

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