IDC Japanは2月4日、企業におけるオープンソースソフトウェア(OSS)の利用実態調査結果を発表した。企業におけるOSSの導入率は31.3%で、この3年間では大きな変化はみられないことが明らかになった。
企業における主なOSSの使用率(IDC Japan提供)
調査では、国内の企業と組織のIT部門を対象としたアンケート調査を2015年12月に実施し、1次調査で1482社、2次調査で309社から有効回答を得た。
1次調査では自社の情報システムにおけるOSSの導入状況について調査し、OSSを「本番環境で導入している」と回答した企業は31.3%だった。前年の調査では31.5%、前々年の調査では32.0%で、この3年間では大きな変化はみられない。
従業員規模別にみると、本番環境で導入している企業は1000人~4999人で36.8%、5000人以上で39.4%となった一方、100~499人以下の企業では最も低い24.8%と、企業の規模に比例してOSSの導入率が高くなる傾向がある。この背景には、多くの中小企業ではOSSを導入して管理する人材が乏しいということが考えられ、またこうした状況がOSSの導入率が上昇しない要因の1つとしても考えられる。
2次調査ではOSSを使用している企業に対して、より詳細にOSSの利用実態について調査した。本番環境で使用しているOSSの種類は、表にある通りLinuxが利用率67.3%と最も高く、リレーショナルデータベース(RDB)の「MySQL」が53.1%で続いている。以下、アプリケーションサーバの「Tomcat」(35.6%)、RDBの「PostgreSQL」(35.0%)、システムソフトウェアの「Samba」(21.4%)、システム管理の「Zabbix」(16.2%)、ハイパーバイザーの「Xen」(16.2%)となった。
一方で近年、クラウドインフラ領域で注目を集めている「OpenStack」は6.1%、コンテナプラットフォームの「Docker」は4.5%だった。またビッグデータ関連としてデータ分散処理の「Apache Hadoop」が6.8%、NoSQLの中では「MongoDB」の使用率が最も高く4.5%となった。こうした新興OSSは認知度も高まってきており、今後のさらなる普及が見込まれる。
さらに調査では、クラウドサービスとOSS使用の関係も分析した。その結果、IaaSを利用している企業の42.5%はOSSを積極的に使用していくという方針を取り、43.8%はOSSを適材適所で使用していくという方針としている。PaaSを利用している企業においても、53.1%がOSSを積極的に使用していく方針で、34.7%はOSSを適材適所で使用していくという方針だった。一方、IaaSあるいはPaaSを今後も含めて利用しないという企業では、OSSを積極的に使用していくという方針は20%未満にとどまっている。このことから、OSS使用はクラウドサービス利用との関係性が強く、クラウドサービスの普及がOSS使用拡大の推進力になるとIDCでは考えている。
同社ソフトウェア&セキュリティ リサーチマネージャーの入谷光浩氏は、次のようにコメントしている。
「今回の調査において、クラウドサービスの利用とOSSの使用は強い関連があることが明らかになった。現在、多くのIaaSやPaaSではOSSが標準サービスとして使用できるようになっている。今後クラウドサービスの普及に伴い、そのクラウドサービス上でOSSを使用する企業がさらに増加していくと考えられる。そして企業ではOSSの使用に対する抵抗感も薄まり、技術力やノウハウが溜まっていくことで、オンプレミスシステムでも様々なOSSを活用していく企業が増えていくとみられる。すなわち、クラウドサービスの普及がOSS使用拡大のドライバになる」