ビッグデータでテニスファンと選手の体験を変革--ATPのパートナー、インフォシス

Asha Barbaschow (Special to ZDNET.com) 翻訳校正: 編集部

2016-03-06 06:30

 Infosysのビッグデータおよびアナリティクス担当責任者のAbdul Razack氏は2009年、全仏オープンテニス男子シングルスの決勝戦を観戦していたが、その際のある出来事が頭から離れなくなったという。

 スウェーデンのRobin Soderlingが、過去4回の優勝を誇るディフェンディングチャンピオンRafael Nadalに4回戦で勝利し、その後さらに決勝進出を決めていた。その決勝での対戦相手がRoger Federerだった。

 「Federerの2セットダウンで、0-30という状況だった。そしてその時、彼は試合全体をひっくり返した」とRazack氏は語る。

 「いちファンとして、この出来事は私の脳裏に焼き付いた。審判席で収集されたデータでその試合を振り返り、追体験できるようになれば、その影響は大きいし、消費者やメディア、対戦相手の体験が向上する。そしてあらゆる点で試合にも有益だ」(Razack氏)

 Razack氏の目が画面に釘付けになる中、Federerは全仏オープンで初優勝した。

 Federerが試合を一転させた決定的瞬間は、アナリストとして非常に興味深かったとRazack氏は言う。そして同氏は、Federerがいかにして試合の展開を変えたのかという点に興味を持ち、傾向を監視して探り出し、試合がFedererのものとなった特定の瞬間を突き止めることができるのかどうかを知りたいと考えた。

 2014年、Razack氏は男子プロテニス協会のATPがロンドンで開催したイベントで、ATPの会長と言葉を交わした。会長は、テニスの試合に関する体験を生み出すことについて話していたという。その結果作られたのが、決勝点となるポイントや特定のサーブでのボール落下地点など、選手や試合に関する詳細な情報をまとめた統計プラットフォームだった。

 ATPワールドツアーのウェブサイトのユーザーインターフェースでは、2人の選手を突き合わせて、これまでの試合データからさまざまなシナリオを想定し、誰が勝利するかを予想することもできる。

 「今年のファイナリストはこのユーザーインターフェースに質問もしていた」とRazack氏は言う。「これが取得しうる最も優れた検証記録であり、彼らはこれを有益なインサイトとして見ているのだ」(同氏)

 InfosysはATPの統計をまとめるにあたって、1200万を超えるデータポイントと5年分ものホークアイ(審判補助システム)データを利用できたとRazack氏は述べた。

 「それは単に、(Federerの場合は試合を一転させるに至った)出来事の可能性と、その出来事に関連するデータポイントの割り出しを始めるための、データ利用、技術の利用、機械学習技術の問題にすぎなかった」とRazack氏。

 「何がいつどうして起きたのかということに関する分析、それこそわれわれがこの件に熱心だった理由だ。つまり、特定の試合についてのファンの体験とストーリーとしての体験を向上させることであり、データを用いてそれをさらに拡大することだった」(Razack氏)

 膨大な量のデータポイントを高度に処理できることで、Razack氏はファンとして心に引っかかっていた瞬間に立ち返り、その瞬間をよみがえらせることができると語る。

 Razack氏によると、特にデータ処理、自動化、人工知能(AI)ベースのテクノロジを中心としたプラットフォームの概念を推進することは、サービス企業にとって差別化要因になるという。自動化を例に取れば、AIあるいは機械学習でInfosysはさらにうまく物事を実現できるようになっているとした。

 Infosysの顧客は小売から金融、鉱業、保険、通信、製造業に及んでおり、ATPのプラットフォームで利用しているものと実質同じテクノロジを使っているという。

 「同じテクノロジを使っている。もちろんデータはさまざまで、アルゴリズムも異なるが、基本的なテクノロジは同じだ」(Razack氏)

 IoTの急拡大を見ていると、スポーツの分野で活用するデータは増えていくばかりだとRazack氏は語る。シャツやラケット、シューズにセンサが組み込まれ、収集できるデータ量はかつてないほど増加するという。

 「センサを備えるすべてのものは常にデータを生み出す。ではそのデータで何をするか?」と同氏。「いかにしてデータを理解し、それをどのようにして意味のあるものに適用するかだ。意味のあるものとは、価値主導であり、体験の改善やビジネス上の価値向上を実現できるものだ」と語る。

 Razack氏は、データのためのデータではなく、ユーザーにとっての価値に基づいてデータが収集される必要があるとした。

 「どの会社を見ても、データの山に囲まれていることは確かだ。そこからいかに意味を引き出すか。それこそが大きな問題だ」(Razack氏)。

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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