調査

日本の主要インフラ産業に執拗なサイバー攻撃--近隣国からの可能性も

Charles McLellan (ZDNet UK) 翻訳校正: 石橋啓一郎

2016-02-26 06:00

 セキュリティ企業Cylanceの調査部門SPEARは、「Operation Dust Storm」(砂嵐大作戦)と題したレポートを公表した。このレポートでは、2010年に始まり数年にわたって続いている、日本、韓国、米国、欧州、および複数の東南アジア諸国の主要産業を対象とした、さまざまな手法を用いたサイバー攻撃について詳しく説明されている。

 SPEARの最新の調査結果は、未だに正体が判明していない攻撃者が、標的を「日本企業または外国の大組織の在日本部門」に移していることを示しているという。

 ハッカーはさまざまな偽の痕跡を残すため、サイバー攻撃の犯人特定は複雑な問題だ。しかし、同レポートの発表説明会で、Cylanceの最高マーケティング責任者であるGreg Fitzgerald氏は、一連の攻撃は「十分な予算があり、人材とスキルの面で十分なリソースを持ち、継続したプレゼンスを維持しており、これらの組織に対する長期的な諜報を行う意図を持っている」という特徴があると述べている。

 同氏は言葉を慎重に選びながら、「これはおそらく、『同じ地域』の特定の国によるものであり、この地域には、サイバーセキュリティの分野で非常に大きな力と、リソースと、スキルを持っている、中国と北朝鮮という2つの国がある。Cylanceはこれらの国のどちらかが攻撃主体であることを示す証拠は持っておらず、攻撃者の正体は偽装可能であり、国でない組織が国を装うことも可能であることから、正体の特定や、特定の国を非難するという考え方は、非常に危険な行動だというのが当社の立場だ」と述べている。

 CylanceはJPCERT/CCに情報を通知しており、同組織も現在進行中の調査に参加しているという。

 「この攻撃は現在まさに進行中であり、さまざまな日本の組織に継続的に侵入している。具体的な対象には、電力会社、石油会社、天然ガス会社、運輸組織、建設会社や、一部金融機関まで含まれている」とFitzgerald氏は述べている。

 Operation Dust Stormについては、ほかに次のようなことが判明している。

  • 長期的な目的:SPEARのチームが、侵害されたネットワークやシステムに対する最初のステージの攻撃で使われたマルウェアを分析したところ、主な動機が長期的な情報の流出や窃盗であることを示す証拠が見つかった。
  • 継続的な未知の脅威:2015年には、同年7月と10月に開始された、さらに2つの攻撃の波が発見された。主要な標的の1つは、韓国の電力会社の日本法人だった。
  • 攻撃のタイプと手法の幅広さ:攻撃では、企業のネットワークやAndroidベースのモバイル機器を侵害するために、スピアフィッシング、水飲み場型攻撃、独自のバックドア、独自のゼロデイ攻撃などをはじめとする手法が使われている。
  • 標的型攻撃:Operation Dust Stormでは、特定の標的組織にカスタマイズされたマルウェアが使用されている。2015年に行われたある攻撃では、日本の大手自動車メーカーの投資部門を狙うために特別に設計された、S-Typeと呼ばれるバックドアの亜種が使われている。
  •  これまでのところ、セキュリティ侵害が実際の業務妨害にまで至ったことはないようだ。「判明している限りでは、一連のセキュリティ侵害は長期的に検知されないまま存在しているだけであり、これまでに対象組織に被害を与えているかどうかは判断できない」とFitzgerald氏は言う。「分かっているのはコンピュータやネットワークへのアクセスを獲得するのに使用されている攻撃手法だけで、これらの手法は、もしその意図があって使用すれば、被害を与えたり、情報を盗んだりすることができるものだ」(Fitzgerald氏)

     Operation Dust Stormに関する完全なレポートはこのページからダウンロードできる。このレポートには、攻撃のタイプ、標的、2010年から2015年までの攻撃の流れなどが記載されている。

    この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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