SDS搭載--IBM、フラッシュSANストレージ「FlashSystem」に容量重視モデル

日川佳三

2016-05-14 08:00

 日本IBMは5月12日、フラッシュメモリと専用ハードウェア機構で高速化を追求した外付けSANストレージ「FlashSystem」のラインアップを拡充した。主にクラウド用途に向けて、重複排除や圧縮と増設で実効容量1.8Pバイトまで拡張できる容量重視の新モデル「FlashSystem A9000R」を同日付けで出荷した。価格は個別見積もり。

 FlashSystemの特徴は、独自のハードウェア機構で高速化を図っていること。例えば、個々のフラッシュメモリボード上に、内部の回路構成を書き換えられるLSIであるFPGA(Field Programmable Gate Array)で実装したデータ転送エンジンを搭載する(図1)。また、個々のフラッシュチップ間やフラッシュメモリボード間でRAIDを組んでいる。読み取り性能は、新モデルのFlashSystem A9000Rの場合、ストレージ6台の最大構成時に最大200万IOPSをうたう。

図1:FlashSystemの特徴は、独自のハードウェア機構で高速化を図っている。個々のフラッシュメモリボード上にFPGAで実装したデータ転送エンジンを搭載する
図1:FlashSystemの特徴は、独自のハードウェア機構で高速化を図っている。個々のフラッシュメモリボード上にFPGAで実装したデータ転送エンジンを搭載する

 今回、ラインアップを拡充した(図2)。従来のモデルは2つある。

 性能重視で機能を最小限に絞った「FlashSystem 900」と、外部接続SANストレージなどを束ねて仮想化するストレージ仮想化機能やデータ圧縮機能などを追加した機能上位モデル「FlashSystem V9000」だ。FlashSystem V9000は、ソフトウェア制御ストレージ(SDS)のソフトウェア「Spectrum Virtualize」(旧称はSAN Volume Controller:SVC)を搭載している。

図2:FlashSystemのラインアップを拡充し、重複排除や圧縮に増設が可能な容量重視のモデルを追加した
図2:FlashSystemのラインアップを拡充し、重複排除や圧縮に増設が可能な容量重視のモデルを追加した

 新モデルのFlashSystem A9000Rは、プライベートクラウドの構築用途などを狙い、重複排除とデータ圧縮で容量を重視したモデルだ。SDSソフトの「Spectrum Accelerate」を搭載する。この上でさらに、重複排除機能を追加した。Spectrum Accelerateは、ノードの追加で容量と性能を拡張できる並列分散型のSANストレージソフトで、ハードウェア一体型の既存ストレージ「XIV Storage System」のソフトウェア部分を切り出したものだ。

重複排除や圧縮と増設で1.8Pバイトに

 FlashSystem A9000Rの特徴は、XIVやSpectrum Accelerateを載せるだけでなく、もともとこれらのストレージが備えていない機能として、重複排除機能を載せたこと。これにより、データの削減効率を高めた。さらに、重複排除の管理テーブルを6台のストレージで共通化し、6台にまたがったスコープでデータの重複を判断し、重複排除の効率を高めている。

 データの削減は4ステップで進める。まず、必要のないデータとして、特定のパターンを抽出して削除する。次に、重複排除をかける。その次にデータを圧縮する。データ圧縮は専用のアクセラレータボードを使ってハードウェアで高速に処理する。最後に、シンプロビジョニング(ボリューム容量仮想化)によって空いている領域に効率よく書き込む。

FlashSystem A9000の外観
FlashSystem A9000の外観

 FlashSystem A9000Rの主な仕様は以下の通り。専用のラックに最大6台のストレージを搭載し、これらを束ねて論理的に1台の巨大なストレージとして運用できる。6台のストレージ同士は、ラックに備え付けられている専用のInfiniBandスイッチを介して通信する。ストレージ6台の最大構成時に物理容量が633.6Tバイト、重複排除と圧縮後の実効容量が1.8Pバイトをうたう。

 FlashSystem A9000Rの下位モデルとして、1台で使うことを想定した「FlashSystem A9000」も用意している。A9000もA9000Rと同様にソフトウェアとしてSpectrum Accelerateを搭載するが、もともとのSpectrum AccelerateやA9000Rとは異なり、ストレージを追加して単一イメージのまま容量や性能を拡張するという使い方ができないという。FlashSystem A9000の容量は、物理容量が最大105.6Tバイト、重複排除と圧縮後の実効容量が300Tバイト。性能は最大50万IOPS。

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