日立、半導体コンピュータの実用化に向けた前処理アルゴリズムを開発

NO BUDGET

2016-06-22 11:39

 日立製作所は6月21日、イジングモデルを用いた新型半導体コンピュータの実用化に向けた前処理アルゴリズムを開発したと発表した。この新型半導体コンピュータは、都市における交通渋滞やグローバルサプライチェーンにおける物流コストなど、システム化された社会インフラの複雑な課題に対する実用解を計算処理により導き出し、システムの高効率化・高信頼化を実現すべく同社が独自に開発を進めているもの。今回開発したアルゴリズムは、新型半導体コンピュータが社会インフラのシステム課題を計算処理可能な形に自動変換する前処理技術として、新型半導体コンピュータの実用化の基礎になるという。

 都市における交通渋滞の解消やグローバルサプライチェーンにおける物流コストの最小化など、複雑化する社会課題を解決するためには、経路や手順などさまざまな組み合わせ(パターン)を、さまざまな制約の下で実用解(最善ではないかもしれないができる限り良い解)を求める技術が必要とされる。これに対し日立は、社会インフラで生じる膨大な「組み合わせ最適化問題」をイジングモデルを用いて処理する新型半導体コンピュータの開発に取り組んでおり、2015年2月に試作に成功した。

 なお、イジングモデルとは、磁性体の性質を説明するために考案されたモデルで、上向きか下向きの2つの状態をとる点(スピン)から構成され、隣接するスピン間の相互作用とスピンの状態からエネルギーが決まるというモデル。組み合わせ最適化問題はイジングモデルとして表現することが可能で、エネルギーが最小になるスピンの状態が、組み合わせ最適化問題の最適解と対応する。

 新型半導体コンピュータ上でイジングモデルを用いて実際の問題を解くためには、経路や手順など、問題を構成している要素と、要素同士がどう関係しているかを示す相互作用を新型半導体コンピュータ上に取り込む必要があるが、要素間の相互作用が複雑であるため、半導体基板上の規則的な構造に当てはめることができないという課題があった。そこで日立は今回、複雑な相互作用を単純で規則的な構造に自動変換することのできる前処理アルゴリズムを開発。これにより、新型半導体コンピュータ上に複雑化した相互作用を効率的に取り込むことが可能になったという。

新型半導体コンピュータの構造と要素の分割
新型半導体コンピュータの構造と要素の分割
今回開発したアルゴリズムの動作イメージ
今回開発したアルゴリズムの動作イメージ

 日立では今後、同社が北海道大学に開設した「日立北大ラボ」を始めとするオープンイノベーションを通じて、新型半導体コンピュータの実用化に取り組み、複雑化する社会インフラに対応した大規模・高速な情報処理を可能とすることで大規模化・複雑化する社会インフラのシステム課題を解決し、サイバー空間と現実社会が融合した社会の実現に貢献するとしている。

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