クラウド売上比率を50%へ拡大する:日本マイクロソフト 平野社長

取材・文:阿久津良和 構成:羽野三千世

2016-07-06 06:00

 日本マイクロソフトは7月5日に会見を開き、新会計年度(2016年7月1日から2017年6月30日)の経営方針を発表した。同社 代表取締役 社長 平野拓也氏は、クラウド分野での売り上げを全体売上高の50%まで引き上げることを本年度の目標に掲げた。

 「昨年度同様、徹底した“変革”を推進する」(平野氏)。そこでは、PCを核とした考えから人を核とした考え方へ移行し、販売重視から利用価値重視へ重点を変更。変革を進めるパートナーとの協力関係をさらに強化していくとする。「Windowsプラットフォームも重要だが、Windowsにこだわらない新たなエコシステムの実現や、チャレンジ精神を持って過去にとらわれない、変革と挑戦を進める社内文化を実現する」(平野氏)

Azureの国内DCのキャパシティ拡大を急ぐ


日本マイクロソフト 代表取締役 社長 平野拓也氏

 これらの変革を実現する上で重要なのが、「プロダクティビティとビジネスプロセス」「インテリジェントクラウド」「革新的なパーソナルコンピューティング」という3つの野心だという。

 まず「プロダクティビティとビジネスプロセス」だが、ここでは同社自身の取り組みに言及した。同社は以前から自社のワークスタイル変革に取り組んでいる。5月1日から新しいテレワーク勤務制度に切り替え、利用頻度や期間、場所などの制限を取り払うと同時にフレックスタイム制度のコアタイムも廃止。「社員の業務効率向上や生産性を高める環境を作り、働き甲斐を高める」(平野氏)

 「インテリジェンスクラウド」については、IoTやAI(人工知能)、機械学習といったキーワードが、既にビジネスで実活用されるプロセスに移ったと説明する。それを裏付ける事例として、Microsoftとトヨタ自動車の提携に伴って設立した「Toyota Connected」や、Microsoft Azureを活用したIoTプロジェクトの共同検証を行う「IoTビジネス共創ラボ」の発足を紹介した。

 さらに、ビジネス基盤をAmazon Web ServicesからMicrosoft Azureへ全面移行したアイキューブドシステムズとの協業 を引き合いに出し、「(顧客企業の)クラウドニーズに応えるべく、日本国内にあるデータセンターのキャパシティを1.5倍のスピードで増やしている」(平野氏)と説明した。日本マイクロソフトの全体売上高に占めるクラウド関連売り上げは、前会計年度第4四半期の時点で32%だった。本年度は「売上げの50%をクラウドで実現する」(平野氏)


左から、日本マイクロソフト 執行役員 政策渉外・法務本部長 スサンナ・マケラ氏、日本マイクロソフト 執行役員 Dynamics ビジネス統括本部超 岩下充志氏、日本マイクロソフト 執行役員 エンタープライズサービス ゼネラルマネージャー ヘニー・ローブシャー氏、日本マイクロソフト 常務役員 常務 パブリックセクター担当 織田浩義氏、日本マイクロソフト 常務役員 常務 コンシューマー&パートナーグループ担当 高橋美波氏

クラウドパートナー2倍、Windows 10の法人訴求などが重点分野

 本年度の重点分野として、平野氏は次の6つを提示した。

 まず1つ目は、お客様のデジタルトランスフォーメーションの推進--だ。ここでは、「ワークスタイル変革」「セキュリティ」「グローバルオペレーション」の3つのキーワードを用意。ワークスタイル変革については、これまで同様、自社がお手本となる形で国内全体をリードしていく。

 セキュリティは、現在70人ほどが顧客のセキュリティ対策の業務に従事しているが、本年度はさらに拡大する予定だ。「米国本社のエンタープライズサイバーセキュリティチームと連携し、日本のビジネスユニットを強化して、大企業の技術サポートやインシデント対応を行う」(平野氏)

 グローバルオペレーションにおいては、自社のノウハウをソリューション化することで顧客の業務最適化につなげるとした。平野氏によれば、既に中部電力などが同社のスコアカードなどのノウハウを取り入れており、これに対して多くの企業が関心を持っているという。

 新しい体制として、パートナー企業のエンタープライズサービスを軸にした変革支援や、製造、金融、流通・小売り、政府・自治体、先端研究・医療といった業種向けソリューションを拡充するため、業務内容に特化したシナリオを提供する「クラウドインダストリーソリューションユニット」を設立する。さらに、今年度を「ガバメント・レディ・クラウド元年」と位置づけ、個人情報保護の国際標準に準拠したパブリッククラウドサービスを推進していくとした。

 2つ目には、Microsoft AzureやOffice 365、Dynamicsの継続的提供を行うクラウド利用率の増加を挙げ、「クラウドは買うものではなく喜んで・安心して利用してもらうもの」(平野氏)とコメント。3つ目は、Microsoft SQL Server 2016による業務効率化や意思決定、業績の可視化を実現するためのデジタルカルチャーの醸成とデータプラットフォームの拡大だとした。

 4つ目は、法人分野でのWindows 10普及。8月2日には「Windows 10 Anniversary Update」を控えており、「(このアップデートによる)企業向けのセキュリティ機能強化点、最新の状態を維持できるメリットを訴求したい」(平野氏)と述べた。

 5つ目は、Windowsデバイスを充実させて顧客の選択肢を増やす最新デバイスによる新たなエクスペリエンスの実現。6つ目はクラウド時代のパートナーシップだとした。

 クラウドパートナーの数値目標について平野氏は「CSP(クラウドソリューションプロバイダー)は前年度までに600社ほど参加している。本年度は2倍の1200社を目指す」とした。さらに、クラウドプラットフォーム、データプラットフォーム、クラウドアプリケーション、セキュリティの4つのシナリオごとにパートナーをリクルートし、養成する専門組織を12月までに立ち上げると説明した。

 平野氏は会見の中で、国内での「Microsoft Cognitive Services」のビジネス展開にも言及した。現時点では未発表だが、大手金融機関と共にMicrosoft Cognitive Servicesのメニューの1つである機械翻訳の活用に向けた取り組みが進んでいるという。


左から日本マイクロソフト 執行役員 常務 マーケティング&オペレーションズ担当 マリアナ・カストロ氏、日本マイクロソフト 常務役員 常務 ゼネラルビジネス担当 高橋明宏氏、日本マイクロソフト 執行役員 デベロッパー エバンジェリズム統括本部長 伊藤かつら氏、日本マイクロソフト 執行役員 最高技術責任者 榊原彰氏、マイクロソフト ディベロップメント 代表取締役 社長 安達理氏

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