“コンテナの標準化”が企業のソフト会社化を加速する:Linux Foundation幹部

羽野三千世 (編集部)

2016-07-15 07:00

 The Linux Foundationは2015年7月に、コンテナ、クラウド、ウェブスケールITを持つ主力ベンダーが協調してコンテナの標準化を目指す組織「Open Container Initiative(OCI)」を立ち上げた。現在は、Docker、CoreOS、Google、Amazon.com、Microsoft、IBM、Intel、Oracle、Twitter、Facebookなど約50社が参加し、移植性のあるオープンな仕様とランタイムの開発を目指して活動している。7月13~15日に都内で開催されたLinuxカンファレンス「LinuxCon Japan」に合わせて来日したChris Aniszczyk氏に、OCIの取り組みとロードマップについて話を聞いた。

--まず、Linux Foundationの中でのOCIの位置付けを教えてください。


The Linux Foundation Chris Aniszczyk氏

 OCIは、コンテナの“ランタイム”と“イメージ仕様”のスタンダードを定義し、どのクラウド基盤上でも動作する移植性のあるコンテナの実現を目指しています。例えば、Docker、CoreOSなどは現在それぞれ独自のフォーマットで作られていますが、これを標準化すれば、すべてのコンテナがプライベートクラウドであるか、パブリッククラウドであるか、そのインフラを問わず、Amazon Web Services(AWS)でもMicrosoft AzureでもIBMクラウドでも動作し、ユーザーの都合でいつでもクラウドベンダーを移動できるようになるわけですね。

 OCIと技術連携するプロジェクトには、Linux Foundationが1年前に組織した「Cloud Native Computing Foundation(CNCF)」があります。CNCFは、「コンテナパッケージ」「マイクロサービス」「コンテナのダイナミックなスケジュール」の3つのテクノロジにフォーカスし、それらに関連するオープンソースのテクノロジを調和させることをミッションとしています。

--どのような背景でCNCFやOCIが設立されたのですか。

 業界のトレンドとして、今、自動車、医療などの伝統企業がソフトウェア企業になってきています。トヨタ自動車が先日、シリコンバレーで人口知能(AI)技術の新会社を設立しましたよね。AIを提供しないと自動車が売れなくなる、自動運転の技術がないとこの先の市場を生き残れないという経営判断でしょう。自動車の製造業だったトヨタが、自社をソフトウェア会社だと再定義したわけです。あらゆる業界、あらゆる企業でこの流れがすでに起こっていることは皆さんも実感しているでしょう。

 さて、伝統企業がソフトウェア会社にシフトするとき、お手本にしたいのは、Google、Facebook、TwitterなどのウェブスケールITのノウハウです。ウェブスケールITでは、その上で何十億ものコンテナ、ソフトウェアが稼働しています。

 Google、Facebook、Twitterなどの企業は、ソフトウェアで商売をしているわけではなくサービスがビジネスであるため、サービスのインフラ部分のノウハウや技術はオープンソース化していく動きがあります。そのオープンソースプロジェクトを取りまとめ、周辺技術と調和をとり、あらゆる企業で使えるようにしていく存在がCNCF、OCIです。

 例えば、Googleが開発してオープンソース化したコンテナオーケストレーションシステム「Kubernetes」のプロジェクトは、Googleから寄贈され、現在CNCFが主導しています。これは、Googleのサービス内部でコンテナをどう動かしているのか、そのテクノロジを外に持ち出して広く使っていこうという取り組みです。

 加えて、このようにオープンソース化されたコンテナテクノロジは、クラウドベンダーのロックインのない形で利用できるのが理想であり、ユーザーのニーズです。そこで、OCIが標準化に取り組んでいるわけですね。

--コンテナの仕様標準化のロードマップを教えてください。

 OCIでは、ランタイム、イメージの双方とも1カ月に1回のサイクルで新しいバージョンをリリースしていますが、最初の標準仕様が固まるのは2016年第4四半期(10~12月)を予定しています。その後、OCIが認証機関になり、Google、Microsoft、AWS、IBM、その他のホスティングカンパニーに標準仕様をわたして認証します。この作業には数カ月かかるでしょう。

 標準仕様はOCI参加企業の間で協議して決めていくものですが、コンテナに関して、すべてをスタンダート化するのは時期尚早ではないかという意見もあります。また、クラウドをベースにしたポータブルなコンテナを提供していきたいという点では一致しつつも、テクニカルな議論でメンバー全員が合意しているわけではありません。いずれにしろ、標準化は長くかかるプロセスです。

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