Fintechの正体

激動のFinTech--金融機関から政府や政党への波及

瀧 俊雄 小船井健一郎 山田竜司 (編集部)

2016-08-04 07:30

 6月2日に発表された「日本再興戦略2016」で、有望成長市場のひとつにFinTechが挙がりました。ドローンやスマート工場や自動走行車に加えて、FinTechが前よりも大きくフォーカスされた一方、まだこの産業は相対的には小さい。新しくなった大きな期待値に適切な温度で応えるというのが、この半年くらいで変わってきたテーマだと思います。まずは、それに至るまでの流れを追ってみます。

金融機関から政府への主役の変化

 2015年12月22日に金融審議会の「決済業務等の高度化に関するワーキング・グループ」(決済高度化ワーキング・グループ)の報告書が出ました。その中身は網羅的で、幅広い課題を挙げた内容だったと思います。

 もともと決済高度化ワーキング・グループで取り扱っていた「日本の銀行にとっての海外業務展開」や「同一グループ内のコスト削減」といった実務的なトピックにくわえて、仮想通貨ビットコインの取引所「マウントゴックス」の破たんのような事件を繰り返されないための対応をするべく、仮想通貨が法律面で定義され、それ以外にも新しい金融制度の形を模索するべく、さまざまな法改正のあり方が検討されました。

 2015年は、金融機関の動きが中心となり、新しいトピックとしての盛り上がりを見せた1年でした。一方で、今年に入ってからは、制度としてのFinTechという言葉の浸透が進んだ時期でした。たくさんの入門本が出版されたのも、それゆえです。その結実したかたちが5月25日に参議院を通り、6月3日に公布された、「FinTech法」と一般的にいわれている一連の法律改訂です。これは環境変化に対応した、ある種の受動的な側面をもった政府の動きです。もちろん「動きを先取りしよう」という面も入っていますが、やや「起きていることへの対応」という面があります。


情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための銀行法等の一部を改正する法律の概要(金融庁資料)
成長戦略としてのFinTech

 この法改正と共に、もうひとつ大きいのが「成長戦略としてFinTechを位置づける」動きです。3月31日の第40回実行実現点検会合にて、発表したのですが、FinTechについての啓蒙をする場になるのかと思いきや、既に重要な成長戦略の一端として位置付けられていたというのが大きな驚きでした。


成長戦略としてのFinTech

 同会合の報告資料を見ると、「世界の後塵を拝することなく」、つまり、米国、中国や英国の動向を意識していて、それらに抗しうるような競争力を日本のFintechもつけなければいけないという意思が現れています。しかし、この温度感には、まだなかなか今の日本のFinTech産業は満たすことができていません。規制サイドの政策ではないので、「こうしなければダメ」という話ではないですが、高い期待値が生まれた印象があります。

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