IBMの新たなラボオンチップ技術、ナノテクノロジで疾患発見目指す

Colin Barker (ZDNET.com) 翻訳校正: 編集部

2016-08-05 12:35

 IBMは米ニューヨークのマウントサイナイアイカーン医科大学の協力を得て、前立腺ガンのテストに利用できるラボオンチップ技術を開発した。

 医学情報誌「Nature Nanotechnology」によると、IBMのチームは生体粒子のサイズベースの分離を直径20ナノメートルまで小さくすることに成功したという。このレベルであれば、研究者たちはDNA、ウイルス、エキソソームといった粒子にアクセスして分離することができる。

IBMの新たなラボオンチップ技術
提供:IBM Zurich

 粒子を分離した後は、医師らがこれを分析して病気の兆候を「患者が身体症状を感じたりする前に」知ることができるとIBMは説明している。

 これまで、オンチップ技術を利用して分離可能な生体粒子の最小レベルは50ナノメートル以上だった。

 IBMとマウントサイナイ医科大学のチームは、今後もラボオンチップ技術の開発を継続するとしている。まず、米国で患者数の多いガンの1つである前立腺ガン向けのテストを行う計画だ。

 科学者らは、細胞が発するメッセージを読み取ろうとしている。生体粒子をナノスケールで分類できるようになれば、科学者はエキソソームが細胞間のやりとりのために運ぶメッセージを「聞く」ことができる。疾患生物学についての重要な疑問を明確にすることができ、「非侵襲的で、いずれ手の届く価格になるポイントオブケア診断ツールへの道を切り開く」と予想している。「細胞間のやりとりを定期的にモニタリングすることで、医学専門家は個人の健康状態や疾患の進行を追跡しやすくなる」とメリットを説明する。

IBMの新たなラボオンチップ技術
提供:IBM Zurich

 チップ上で検査測定を行うラボオンチップ技術は、医師と研究者にとって、より高速で移植性があり、使いやすく、疾患の発見を支援するサンプルをさほど必要としない一層優れた手段となる。目標は、単一のシリコンチップに「通常ならフルスケールの生化学ラボで行われているような、疾患を分析するために必要なすべてのプロセス」を圧縮することだとIBMとマウントサイナイ医科大学の研究者は述べている。

 ナノスケールのオンチップ技術は、ナノDLD(Deterministic Lateral Displacement)と呼ばれており、IBMのJoshua Smith氏とBenjamin Wunsch氏が率いる科学者らが開発した。

IBMの新たなラボオンチップ技術
提供:IBM Zurich

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. セキュリティ

    「デジタル・フォレンジック」から始まるセキュリティ災禍論--活用したいIT業界の防災マニュアル

  2. 運用管理

    「無線LANがつながらない」という問い合わせにAIで対応、トラブル解決の切り札とは

  3. 運用管理

    Oracle DatabaseのAzure移行時におけるポイント、移行前に確認しておきたい障害対策

  4. 運用管理

    Google Chrome ブラウザ がセキュリティを強化、ゼロトラスト移行で高まるブラウザの重要性

  5. ビジネスアプリケーション

    技術進化でさらに発展するデータサイエンス/アナリティクス、最新の6大トレンドを解説

ZDNET Japan クイックポール

注目している大規模言語モデル(LLM)を教えてください

NEWSLETTERS

エンタープライズ・コンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]