IBMは米ニューヨークのマウントサイナイアイカーン医科大学の協力を得て、前立腺ガンのテストに利用できるラボオンチップ技術を開発した。
医学情報誌「Nature Nanotechnology」によると、IBMのチームは生体粒子のサイズベースの分離を直径20ナノメートルまで小さくすることに成功したという。このレベルであれば、研究者たちはDNA、ウイルス、エキソソームといった粒子にアクセスして分離することができる。
提供:IBM Zurich
粒子を分離した後は、医師らがこれを分析して病気の兆候を「患者が身体症状を感じたりする前に」知ることができるとIBMは説明している。
これまで、オンチップ技術を利用して分離可能な生体粒子の最小レベルは50ナノメートル以上だった。
IBMとマウントサイナイ医科大学のチームは、今後もラボオンチップ技術の開発を継続するとしている。まず、米国で患者数の多いガンの1つである前立腺ガン向けのテストを行う計画だ。
科学者らは、細胞が発するメッセージを読み取ろうとしている。生体粒子をナノスケールで分類できるようになれば、科学者はエキソソームが細胞間のやりとりのために運ぶメッセージを「聞く」ことができる。疾患生物学についての重要な疑問を明確にすることができ、「非侵襲的で、いずれ手の届く価格になるポイントオブケア診断ツールへの道を切り開く」と予想している。「細胞間のやりとりを定期的にモニタリングすることで、医学専門家は個人の健康状態や疾患の進行を追跡しやすくなる」とメリットを説明する。
提供:IBM Zurich
チップ上で検査測定を行うラボオンチップ技術は、医師と研究者にとって、より高速で移植性があり、使いやすく、疾患の発見を支援するサンプルをさほど必要としない一層優れた手段となる。目標は、単一のシリコンチップに「通常ならフルスケールの生化学ラボで行われているような、疾患を分析するために必要なすべてのプロセス」を圧縮することだとIBMとマウントサイナイ医科大学の研究者は述べている。
ナノスケールのオンチップ技術は、ナノDLD(Deterministic Lateral Displacement)と呼ばれており、IBMのJoshua Smith氏とBenjamin Wunsch氏が率いる科学者らが開発した。
提供:IBM Zurich
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。