米Dellは6月末に、女性起業家を支援する年次イベント「Dell Women’s Entrepreneur Network（DWEN） Summit 2016」を開催した。今年の開催地は、南アフリカ・ケープタウン。日本からの参加者2人を含む約150人の女性起業家が世界から集まり、ビジネスの成長についてそれぞれの立場から議論を交わした。
前編に続き、シリコンバレーの起業家とは違う起業ストーリーを紹介する。もう一人はSarah Collins氏。「Wonderbag」という料理バッグを作った。
Wonderbagはアフリカならではの問題に対してCollins氏が出した解決策だ。孤児院で料理を作っていた自分の祖母は、料理に一日を費やしていた。料理そのものよりも、料理に使う火を求め、女性や子供たちはたきぎを集めなければならない。子供たちは学校に行けず、靴も買えない。これをCollins氏は「時間の貧困」という。
そこで思いついたのが、断熱材を使った保温だ。断熱に優れた樹皮で保温するというアイデアそのものは新しいものではないが、保温バッグを用いることで、一度熱した鍋を入れれば温度を維持してくれる。大量生産できる素材を用いて、アフリカらしいビビッドな色合いの布で包んだ。鍋の大きさに合うように花びらのように広がるデザインもCollins氏のアイデアだ。
子供たちは、たきぎを集める代わりに学校に行けるようになった。女性たちは鍋の前で過ごしていた時間を他のことに割り当てられるようになり、子供に靴を買えるようになった。
2008年にスタートした小さな手作りのバックは、いまやオンラインで販売されるようになった。アフリカの女性と子供を救ったほか、エコの観点から先進国でも注目を集めている。2日目、エレベーターピッチのアドバイスをするSpringboard EnterprisesのDolphin Tankに登場したCollins氏は、「もっとビジネスを成長させるためにメンターがほしい」と語った。
Wonderbagの創業者Sarah Collins氏
鍋を包んで保温するWonderbag
女性起業家インデックス、東京は世界25都市中17位
DellはDWENに合わせて「Dell Women Entrepreneur Cities Index（WE Cities）」という調査も発表した。女性起業家の支援を応援するだけでなく、調査を通じて課題を政府や関連機関に提示していこうというものだ。これまでは国レベルで女性の起業について環境やインフラなどを評価してきたが、今年は世界25の都市を対象に調べた。最高マーケティング責任者（CMO）のKaren Quintos氏は、「実際のアクションとアウェアネスが起こっているのは、国ではなく都市レベル」とWE Cities Indexの狙いを説明した。
資本へのアクセス、技術、人材、文化、市場の5つから都市を分析し、合計70もの指標を用いた。その結果、1位は米ニューヨーク市、2位は米サンフランシスコ・ベイエリア、3位は英ロンドンとなった。東京は17位。北京（13位）、香港（14位）、台北（15位）、上海（16位）より下だった。市場や技術では高いスコアを出したが、文化面での低スコアが足を引っ張った。
日本からは東京が17位にランクイン。文化面が足を引っ張った形で、女性起業家に優しい都市になるための課題は多そうだ。
Dellはまた、インキュベーターコミュニティを構築する1776と提携し、スタートアップ向けのプラットフォーム「Union」を立ち上げたことも発表。起業家の所在地を問わずにネットワークで結びつくことができるもので、アイデアをスケールさせるのに必要な人、リソース、知識にアクセスできるという。
