海外コメンタリー

量子コンピュータの実用化見据え、求められるセキュリティ--NISTが耐量子暗号の標準策定へ

Steve Ranger (ZDNET.com) 翻訳校正: 石橋啓一郎

2016-08-22 06:00

 量子コンピュータは、(理論的には)従来のデジタルコンピュータには手に負えなかった問題を解く可能性がある。

 これは、電子メールから医療記録や銀行の取引まで、あらゆる場面で使われている現時点では安全な暗号が将来解読できるようになり、セキュリティ上の大問題が発生する可能性があることを意味している。

 近年、量子コンピュータの研究が進展したことで、政府やテクノロジ企業は、大規模な量子コンピュータの構築が実現した場合に備えて、量子コンピュータでも解けない安全な暗号を準備する必要があることを認識している。

 これを受け、技術標準を監督する米国の政府機関である米国立標準技術研究所(NIST)は、耐量子暗号の開発に向けて最初の一歩を踏み出した。

 NISTは、量子コンピュータでも破れない公開鍵暗号の発見と評価を行う、新しいプロセスに対するパブリックコメントの募集を開始した。

 「今後大規模な量子コンピュータが構築された場合、現在使用されている公開鍵暗号の多くは解読が可能になる。このことは、インターネットおよびそれ以外のデジタル通信の秘密性と完全性に対する、重大な危険となり得る」とNISTは述べている。

 数時間以内に鍵長が2000ビットのRSAを破る能力を持つ量子コンピュータが約10億ドルの予算で2030年までに実現すると研究者は予想している。NISTは、最近発表した耐量子暗号に関するレポートの中で、「これは、現在までにNISTによって標準化された暗号システムに対する重大な長期的脅威だ」と警告している。

 今回の取り組みの目的は、量子コンピュータと従来のコンピュータの両方に対して安全で、かつ既存の通信プロトコルやネットワークと相互運用可能なシステムを開発することだ。

米国立標準技術研究所(NIST)が耐量子公開鍵暗号の標準策定プロセスへのパブリックコメントを募集
研究者はすでに次世代の暗号に取り組んでいる。
提供:iStockphoto

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