事業会社で取り組むデータ分析の実際

データ活用を阻む、情報のサイロ化とその解決

伊藤徹郎

2016-09-20 07:00

 前回の記事では、データの取得から活用までを幅広く説明しました。全体像を解説したところで、個別の事象にフォーカスして説明します。

データ活用と個人情報後のトレードオフ

 これまで説明してきたように保持するデータを活用し、そこから自社のビジネスに役立てることに関しては誰も反対意見を述べることはないでしょう。データ活用という文脈における方向性はほぼ一つの道であることは疑う余地はありません。

 しかし、これだけデータ活用が重要だと多くの企業が認識している中、なぜ「イマイチ」データ活用の取り組みに手応えがないのでしょうか。本稿ではその点について考察していきます。ここでは基本的に自社のデータはすべて1つのDWH(データウェアハウス)に集約した段階において起こりうることを想定しています。

 自社データを1つのデータソースに集約した後に考えることは、誰がどんな権限をもってデータにアクセスできるのかという点です。いわゆるどの程度の範囲で利用可能データを利用を可能するか「データアクセシビリティにおける業務フロー」を定義しなければなりません。せっかく1つのデータソースに集約されているのだから、みな平等にアクセスできればよいかというとリスク管理の観点では、そんなことは言えません。

 直近で言えば、通信教育大手の会社が顧客情報を流出したとして大きな問題になったことが記憶に新しいでしょう。言わずもがなではありますが、ある特定の個人によって引き起こされた事象が企業のその後の方向性を決定的に変えてしまうほど、データの扱い方は気をつけなければならないのが現状なのです。

 個人情報保護法が設立され、内部統制報告制度(J-SOX)などが取り入れられ、企業における情報統制体制はかなり充実してきています。そのため、情報へのアクセシビリティにおいても厳格な運用ルールが定められ、運用されることが普通になってきています。この運用が厳格なほど、データ活用のハードルが上がってしまうのです。これらはまさにトレードオフの関係性となります。


 前回の記事にて情報システム部門とマーケティング部門が相容れないと書きましたが、これはまさに上記のトレードオフがそうさせるのです。どちらか一方の主張が強ければそちら側に倒れてしまいます。基本的にはお互いに協調してバランスをとりながら活用の道を探るということが王道なのですが、これがなかなか難しい取り組みであると言えます。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ZDNET Japan クイックポール

注目している大規模言語モデル(LLM)を教えてください

NEWSLETTERS

エンタープライズ・コンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]