金融機関の事務量50%減も--アクセンチュアがロボティクスを推進する理由

山田竜司 (編集部)

2016-10-07 07:58

 アクセンチュアは10月6日、国内の金融機関向けに人工知能(AI)、ロボティクス領域の専門チームを10月1日に金融サービス本部内に創設したと発表した。

 同社の海外実績に基づき、人間のみが処理可能とされていた作業を、ロボティクス技術を活用して処理するオペレーション自動化の仕組みである「RPA」(ロボティック・プロセス・オートメーション)により提供する。


アクセンチュア 執行役員 金融サービス本部 統括本部長 中野 将志氏

 アクセンチュアの海外での実績に基づき確立した方法論や、独自開発したツールを用いて、RPAの適用余地診断からコンセプト検証(PoC)、パイロット環境の構築、実装まで総合的に支援する。さらに、欧米先進金融機関におけるRPA導入プロジェクトや研究施設などの視察をサービスとして提供するとした。

 RPAは、条件を判断をしながら、データを収集、加工、自動入力、チェックできる仕組みであり、判断や簡易な意思決定を伴った入力オペレーション技術。複数の媒体やシステムにまたがって動作し、プログラミング不要で導入できる点が特徴であり、PC上で実施していた作業の自動化が可能と説明している。


自動化できる主な作業例

 RPAの具体的な効果として、人的エラーがなくせるなど「高品質」であること、事務プロセスの時間を4割程度削減可能であるといった「生産性の向上」、事務量や事務コストを削減できる点を挙げた。

 「ロボティクスは24時間365日休まず、疲れて顧客に失礼なメールをすることもない。デモをすると金融機関の顧客からは、″気持ち悪いくらい有用”というお言葉をいただく。負荷の高い作業はロボットに付加価値の高い作業は人間にという考えだ」(アクセンチュア 執行役員 金融サービス本部 統括本部長 中野 将志氏)

 公開されたデモでは、メールを送る、経費精算をするといった作業のうち、いくつかの工程をRPAが代替し、いずれの場合でも人間の数倍のスピードで作業を完了させていた。

 実際、アクセンチュアが支援した数十の金融機関へのRPAプロジェクトでは50%以上の事務量削減を実現したという。


 RPAはアクセンチュア自体にも交通費などの経費システムとして導入されているほか、作業の実働部隊があるインドのデリバリーセンターでは、ロボティクスにより、人が担当する作業量の減少に伴いオペレータ数も減らしていることを明らかにした。


金融サービス本部 マネジング・ディレクターの下野崇氏

 金融サービス本部 マネジング・ディレクターの下野崇氏は「ルール化できるものはRPAに任せられる可能性がある。欧州ではマネージャー職の事務作業の圧縮ができ、よりクリエイティブな仕事に時間を利用している。人手が足りないと諦めていた事業もロボティクスにより実現できるかもしれない」と説明。RPAのロボティクスによる大幅な生産性向上の可能性を示すとともに、すでに相当数あるというRPAの導入企業や実装での実績に自信を見せた。

 また、金融機関向けにAI、ロボティクス領域の専門チームを作った理由として、金融業界の効率化余地が大きいことを挙げた。特に近年国内の金融機関では、法規制の強化やマイナス金利政策などにより、収益性の低下が懸念されており、業務の自動化や効率化に向けた取り組みが求められている背景があると説明。海外の金融機関での実績があり、低コストでかつ生産性を向上させるRPAの導入の意義をアピールした。

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