ブロックチェーン

ブロックチェーンは投資家にとって魅力的な市場に成長

阿久津良和

2016-10-11 07:00

 10月4~7日に幕張メッセで開催された「CEATEC JAPAN 2016」カンファレンスでは、IoTや近未来のテクノロジに関するさまざまな取り組みが紹介された。その中でも特に興味深い講演が、ブロックチェーンを取り巻く動向を解説した「ブロックチェーンは何処へ行くのか~これからの可能性を探して~」である。


伊藤忠テクノロジーベンチャーズ ベンチャーパートナー 菅野政治氏

 FinTechを支える重要技術の1つに数えられるブロックチェーンはキーワードが先行して、まだビジネスの現場に浸透しているとは言い難い。伊藤忠テクノロジーベンチャーズ ベンチャーパートナー 菅野政治氏は、2016年のブロックチェーン関連トピックとして、「ビットコインの半減期」「Ethereumのハードフォーク」「ブロックチェーン協会の発足」「改正資金決済法の設立」の4つを挙げた。

 仮想通貨である「Ethereum(イーサリアム、ETH)のハードフォークについてはこちらの記事で詳しく解説しているとおり、コードの脆弱性からETHが流出した事件である。ETHの運営元であるThe Ethereum Foundationは協議のすえにハードフォーク(互換性を捨てた仕様変更)を選択したが、「非中央集権型というブロックチェーンのポリシーに反するのでは、という意見もあった」と菅野氏。

 また、ブロックチェーン協会の発足、改正資金決済法の成立については、「FinTech以外でもブロックチェーンが利活用される環境が整いつつある」(菅野氏)と述べた。

ブロックチェーンは魅力的な投資市場

 ブロックチェーン関連企業におけるVC(ベンチャーキャピタル)の投資状況だが、グローバルでは2012年頃から投資が始まり、2014年頃から急増。2016年第1四半期までの累計は約11億ドル。2015年度だけでも約4.9億ドルと累計の半分ほどに達している。さらに2015年度はビットコイン関連企業からブロックチェーン関連企業への投資が増加し、その差は約4倍と、投資家にとって魅力的な市場に成長しつつある。

 投資する企業についても金融系企業が根強いものの、昨今は多様なサービスを提供するユニバーサルサービス系企業が増加し、分類しにくくなっているという。また、ID認証やサプライチェーン、政府関連といったエンタープライズ向けサービスへの投資も増加しているという。この状況について、菅野氏は、「今後は、単一の金融サービスだけでは、ブロックチェーンビジネスで生き残るのは厳しい」と分析する。

市場成長に向けた改善面

 このようにグローバルでは盛り上がりを見せているブロックチェーンビジネスだが、今後の成長に向けた改善策が必要だと菅野氏は「資金面」「技術面」「法規制」「ビジネス」と4つの側面から説明した。

 ブロックチェーンビジネスは始まったばかりのため、実証実験など試行を繰り返しながらビジネスチャンスを手探りしている状態だ。即座に安定した収益基盤を構築するのは難しいため、この間を埋める予算確保が問題になる。だからこそ、ブロックチェーン関連企業は継続的な資金調達が必要と説明している。

 技術面はブロックチェーンに精通した国内エンジニアの少なさを指摘。法規制は「利用者が使いやすくなる環境は整備されつつあるが、決済や税制度など未着手の部分が多い」(菅野氏)ため、さらなる法整備が必要だと強調した。またビジネス面では、ブロックチェーンを普及させるために「業界をまたいだ連携や魅力的な事例を作り出すことが必要」(菅野氏)と述べている。

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