展望2020年のIT企業

高める風評被害やネット炎上の予知 - (page 2)

田中克己

2017-01-12 07:30

ビックデータ解析によるテロリストの発見サービス

 エルテスのもう1つの柱は、2011年に始めたネット炎上の予防対策サービスだ。記述量が一気に数倍に急増した口コミやブログなどを監視し、顧客に通知し、対策を打つもの。特に東日本大震災後、ブログや口コミを含めたソーシャルネットの拡散力が増し、炎上が増えている。その数は2015年に1000件を超えたという。

 予防対策はいくつかある。1つのケースは、例えば、アルバイトが店舗の冷蔵庫に入った写真を投稿した場合、誰かはすぐに分かるので、炎上する前に削除させる。もう1つのケースは、食品に異物が混入していた場合、炎上するかしないか見極めることも大切だという。投稿した人物がネット上に頻繁に悪意のある情報を書き込んでいたら、「また嘘を言っている」となるかもしれない。半面、その食品ファンの発言なら、即座に謝罪する。

 もちろん、そんな単純なことではないが、同社は過去のネット炎上をデータベース化し、「こうして炎上した」といったいわば“失敗事例”から予防対策をアドバイスする。利用する顧客は、大企業が多いという。

 ビックデータ解析の事業を広げている。1つは、テロリストの発見だ。誰と誰がコミュニケーションしているかといったオープンデータインテリジェンスと呼ぶ方法で、危険な兆候を見つけ出す。ソーシャメルネットを使った勧誘活動をするテロ集団の情報をフォローする人も探し出す方法もある。

 菅原氏は「インバウンドに力を入れる上で、テロ対策は重要なこと。一度、事件が起きたら、風評で来日する外国人が減るだろう。ゼロのうちに対策を講じることが大切」とし、テロリストの発見力は抑止力にもなるという。2020年の東京オリンピックまでに開発する。産業革新機能が同社に出資した理由は、ここにもあるという。

 機密情報を持ち出す社員の発見にも、ビックデータ解析を使える。例えば、人事情報がすぐにネットに漏れる企業の中で、転職サイトをみている社員を監視する。勤務時間も調べる。毎朝9時前に出社していた社員がたびたび遅刻する。こうした社員の行動をPCログなどから分析する。

 デジタル化が新種のリスクを次々に生み出す。結果、その予知や予防、解決の相談が増える。エルテスはそれに応えるだけで、新しいビジネスを創り出せているという。

田中 克己
IT産業ジャーナリスト
日経BP社で日経コンピュータ副編集長、日経ウォッチャーIBM版編集長、日経システムプロバイダ編集長などを歴任し、2010年1月からフリーのITジャーナリストに。2004年度から2009年度まで専修大学兼任講師(情報産業)。12年10月からITビジネス研究会代表幹事も務める。35年にわたりIT産業の動向をウォッチし、主な著書に「IT産業崩壊の危機」「IT産業再生の針路」(日経BP社)、「ニッポンのIT企業」(ITmedia、電子書籍)、「2020年 ITがひろげる未来の可能性」(日経BPコンサルティング、監修)がある。

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