ものづくりのサブスクリプションモデル移行は現実的か--HCL

怒賀新也 (編集部)

2016-12-16 07:00

 製造業に「サービス化」への大きな圧力がかかっている。世界的には、欧州の「Indsutrie 4.0」、米国の「Industrial Internet」といった大きな波を受け、日本政府も平成29年度経済産業政策の重点として、「第4次産業革命」を起点とする未来投資と世界の知の活用を打ち出している。

 自動走行車やロボット、ドローンなどを交え、ものづくり分野の革新が急務であることを伝えている。シナリオとしては、General Electricが、航空機エンジンを製品として販売するのではなく、飛行距離に応じて課金するサービスモデルに事業モデルをシフトさせていることを典型例として挙げるケースが多い。

 実際に、変化の場面に直面している企業はどう考えているのか。製造業の業務改革を支援するインド企業、HCL Technologiesのエンジニアリング&サービス部門のプレジデント、GH Rao氏に聞いた。

鍵を握るのは、人工知能やIoT

HCL Technologiesのエンジニアリング&サービス部門のプレジデント、GH Rao氏
HCL Technologiesのエンジニアリング&サービス部門のプレジデント、GH Rao氏

 多くの産業はよりサービス中心型になると考えている。すべての商品がなにかしらのカスタマイゼーションを含むだろう。製品単体ではなく 、エコシステムが重視されるようになる。大切なのは、ユーザーの要望を製品やサービスにすばやく反映していくという意味で、レスポンスタイムやサイクルタイムを改善していくことである。

 そこで鍵を握るのは、人工知能(AI)、IoT、アナリティクスなどの技術になってくるだろう。

 特に、製造業における伝統的な大量生産時代からの変化は注目できる。製品を売って終わりではなく、ユーザーの利用行動を把握して、製品やサービスの開発に反映する のが当たり前になってくるだろう。進化したテクノロジとして、企業としてお客のニーズに最も近いモノを生産していくのである。

 日本の第4次産業革命という考え方は、従来の製造業の範囲を超えた幅広いコンセプトとなる。重要なのは、教育や社会的な問題を理解することを含めたトレーニングであり、日本社会、政府、国民が経験しつつあるパラダイムシフト全体を指すものだ。包括的に社会を見据えた上で、新しいテクノロジを学び続けなければいけない。それにより、日本とグローバルビジネスをどうつなげていく必要がある。

 日本はIoT、ロボティクス分野が進んでいる。製造業がサービス化するというのは確かに難しいが、大きなうねりとしてまだ始まったばかり。売り切り型から「サブスクリプションモデル」にした方が、長期的に見れば顧客をつなぎとめやすく、結果的に高収益型の事業モデルになると考えている。

 今後は、人工知能(AI)の活用も鍵になってくる。これまでAIの開発はあくまでもテクノロジの観点で進んできた。今後は、AIを適用することで、人にとっての体験をどう構築するか、どう収益を押し上げていくかにポイントが移ってくる。

日本のエンジニアリングに注目

 日本には年に4回ほど来る。半導体、自動車など製造業に焦点を当てている。エンジニアリングサービスを水平的に実施したいと考えているが、業種別という意味では、カメラ、医療用機器、液晶パネル、モバイル端末を含めたコンシューマーエレクトロニクスや自動車産業が特にターゲットになる。HCLとして、旧来の組み込みソフトウェアの開発に加えて、第4次産業革命の中心となるテクノロジの活用、開発についても日本企業をサポートしていく。

 われわえれも独自に、アナリティクス向けツール 「PANGEA」(パンジア)を提供している。ビッグデータからの正確かつ迅速な洞察を獲得するために実施する大規模データ分析のためのワークベンチだ。

 自動化により、アナリティクスのライフサイクル全般に渡ってスピード、規模、連携を実現、ベストプラクティスを適用し確実にTCOを削減する。特徴は、アナリティクスに関わる複数ステークホルダーの連携のサポート、迅速な分析モデルの構築を実現するゼロコーディングアプローチ、データ品質やモデルの精度を保証するデータおよびモデルのガバナンス機能などの提供だ。

 新たな収益源の展望、製品イノベーション、競争優位性確立などを、導入企業に価値として提供できると考えている。(談)

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