日本株展望

トランプ会見は期待外れ--期待が失望に変わるリスクも

ZDNet Japan Staff 2017年01月12日 11時30分

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今日のポイント

  1. 日本時間で1月12日の午前1時過ぎに、トランプ次期大統領が記者会見を開いた。具体的な経済刺激策に触れず、市場をやや失望させる内容だった。一部、保護主義の暴言が復活していたことも懸念される
  2. トランプノミクスへの期待と世界的な景気回復を背景に上昇してきた日本と世界の株だが、トランプ氏の大統領就任日(1月20日)が近付くにつれて、期待が現実に近づくか失望に変わるか、慎重に見極めようとのムードが広がる可能性がある

 これら2点について楽天証券経済研究所長兼チーフストラテジストの窪田真之氏の見解を紹介する。

注目されたトランプ会見で具体的な経済政策の表明なし

 日本時間で1月12日の午前1時過ぎに、トランプ次期大統領の記者会見があった。トランプ氏は、当選後これまで記者会見を全く開かず、Twitterで短い文字数で一方的に意見発信するだけだった。今回、大統領選に勝利してから初めての記者会見となり、極めて注目が高かったが、具体的な景気刺激策の表明がなく、やや失望される内容だった。

 市場が期待していたのは、当選直後に行った「勝利宣言」のような前向きな内容だった。勝利宣言では、(1)米景気を強くする経済政策(公共投資や減税)の実施、(2)世界各国との良好なパートナーシップの構築、(3)米国民の一致団結――などを力強く話し、トランプ氏の市場評価を一気に高める内容だった。

 今回の会見では、雇用創出に力を入れることを強調したものの、具体的な景気刺激策には触れなかった。トランプ氏は、Twitterを通じて米自動車大手フォードがメキシコに工場を移転することを批判していたが、批判を受けてフォードがメキシコ移転を撤回したことを「すばらしいニュース」と自賛した。

 保護貿易の強硬策をちらつかせることで、世界各国の大企業に米国に積極投資する方針を述べさせていることを手柄として自慢するだけでは、前向きな経済政策とは言えない。

 大統領当選前に語っていた保護主義の「暴言」が一部復活していたことも気になる。

 「メキシコに工場を移転して米国へ輸出する企業に高い関税を課す」「メキシコ国境に壁は必ず作る。1年や1年半も待てない。費用はメキシコに払わせる。直接支払いになるか、関税による徴収になるかはわからない」「貿易では良い取引ができていない。中国との貿易不均衡で損失が出ている。日本やメキシコ、その他ほとんどの国に対しても良い取引ができていない」などの発言があった。

 会見では、経済政策への言及が少なかった代わり、米メディアの批判に対する反論に重点が置かれていた。

 トランプ氏は、ロシアが大統領選挙期間中に米国にサイバー攻撃した可能性を認めたものの、ロシアがトランプ氏を助けるために動いたとの見方は否定し、ロシアと一切取引していないと述べた。また、一部メディアが「ロシアが、トランプ氏に不利になる情報も握っている」と報じたことについて「まったくのでたらめ」と否定した。

 また、自身が経営する不動産会社の経営権を2人の息子に譲ると述べ、不動産経営と大統領の職権で利害相反が起こる可能性も否定した。

「トランプラリー」と言われているが実態は「世界景気回復を買う相場」

 トランプ氏の会見直後に一時、米国株が下がり、ドル安(円高)が進んだ。経済刺激策への言及がなかったことが嫌気されたからだ。ただし、その後、株も為替(ドル)も持ち直した。日本時間で1月12日午前6時半時点で、1ドル115.33円となっている。

 トランプ氏当選から世界景気の回復色が強まり、世界株高が始まっている。今の株高はトランプ氏に期待する「トランプラリー」と呼ばれているが、今回の記者会見を見る限り、トランプ氏の政策には期待よりも不安が大きいと再認識した。

 世界景気の回復を買う流れは、簡単には終わらないと考えられるが、トランプ氏の現実の姿が見えてくることが株式市場にとってリスク要因であると考えられる。

 今回の会見では、為替(ドル高・円安)への言及はなかった。日本との貿易に絡んで円安批判が復活すると、日本株には悪影響が及ぶ。

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