ドローンビジネスの夜明け

ドローン運行管理システムの現在--目視外飛行の実現に各国がテクノロジを競う

神原奨太(テラドローン)

2017-05-15 07:00

 前回、ドローンに関わる業務用ソフトウェアを概観した。今回は、よりマクロな規模でドローン産業を支えるシステムとして、ドローンの運行管理システム(UTM)を取り上げる。ドローン産業の発展に欠かすことの出来ない基盤と言っても過言ではないUTMについて、その重要性や、機能、取り組みを紹介する。

 UTMとは、Unmanned Traffic Management system(無人機の運行管理)の略称である。有人航空機の業界には、ATM (Air Traffic Management: 航空運行管理) という用語があるが、同様の運行管理の概念として、無人機の世界で議論が進んでいる。

 機能については現在、さざまな議論がなされているが、複数の無人機同士・有人機の運行情報を統合・差配するその手法が大きな論点となっている。

ドローンの目視外飛行の可能性

 現在のドローンの運用は、ラジコンのように人が見える範囲内(目視内)でコントローラを用いて操縦するイメージが強い。しかしドローンの本質的な可能性は、無人での自動制御が可能という点であり、特定の飛行に対して人の介在を最小限にして、ローコストで活躍できることが望ましい。


 ドローン産業の発展のためには、目視外=BVLOS(Beyond Visual Line of Sight)での飛行が必須であり、UTMは、この目視外飛行が増加してくる際に、ドローンの飛行を安全かつ効率的に実現するための仕組みであるとも言える。

 ドローンの目視外飛行は、監視者の人手が不要で、広いエリアをカバーできるという点で、土木測量、点検、捜索救助、物流など各産業について、費用対効果の高いソリューションを実現する。

 一方で懸念される点は安全性の部分であり、この点については現在世界中で合意形成が図られている状況である。現在世界で、有人機の航行する空域を日常的にドローンが飛行することはほぼあり得ないが、有人機との近接空域での飛行においては特に安全性の担保が必須である。

 そもそも、ドローンの目視外飛行 (BVLOS) については各国が相応の制限を課している状況であるが、一部の国々では徐々に許可を発行し始めている。

 例えばスイス連邦民間航空局(FOCA)は、この2月、スイスに拠点を置くSensefly社のドローン「eBee」によるBVLOS飛行を初めて承認した。カナダでも同じく2月にAeryon Labs社のSky Rangerが初めて目視外飛行を行い、25キロ以下のドローンでは安全面でも規制面でも問題なく運行可能であることを証明した。

 また米国では、2016年夏に米国連邦航空局(FAA)が発行したpart107 (無人機に関する航空規則) によりドローンの目視外飛行が規制されていたが、ドローン産業の発展を阻害するという事業者からの批判も存在し、規制緩和の動きも出てきている。

 2016年12月には、FAAがノースダコタ州の試験場で、初めてBVLOS飛行の許可を発行した。各国がようやくBVLOS飛行に許可を出し始めた中、最も先進的に取り組んでいるのが実は日本の国土交通省なのである。こちらのサイトを参照すると、日本では既にかなりの数の目視外飛行に対して許可を発行していることがわかる。

 こちらは事前の各社・個人からの申請になるので、実際に全ての飛行が許可を取得した飛行形態をとったとは限らないが、実は日本では既にかなりの数のドローンが目視外飛行を実施しているのである。

 最終的な責任はもちろん飛行させる事業者側にあるが、他国では初めて目視外飛行実現、ということがニュースになっている一方で、日本がここまで目視外飛行で先進的なことはあまり知られていない。

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