座談会@ZDNet

銀行で急速に高まるベンチャーマインド、減点主義からの転換--FinTech座談会(2)

飯田樹 山田竜司 (編集部)

2017-05-25 07:00

 金融(Finance)とテクノロジ(Technology)の造語であるFinTech。2015年にはメガバンクグループでFinTech専門組織の設立が相次ぎ、FinTech協会も設立された。2016年には金融庁を中心とした法制度の整備が進んだことも記憶に新しい。FinTechに対して、金融の現場ではどのような取り組みがされており、どこに向かっているのか、識者5人が語る。参加者は以下のとおり。今回は第2回(第1回)。

参加者(自己紹介順)

  • 藤井達人(三菱UFJフィナンシャル・グループデジタルイノベーション推進部シニアアナリスト)
  • 大久保光伸(みずほフィナンシャルグループデジタルイノベーション部シニアデジタルストラテジスト)
  • 平手佑季(三井住友フィナンシャルグループ ITイノベーション推進部部長代理)
  • 大平貴久(トーマツベンチャーサポートアドバイザリーサービス事業部 FinTechリーダー)
  • 落合孝文(渥美坂井法律事務所・外国法共同事業パートナー弁護士)

金融機関で起きている変化とは

 落合氏:私はFinTech協会で活動をしていて、全銀協のAPIの検討会も含めて、メガバンクの動きがいろいろな銀行をリードしている印象を受けています。また、メガバンクを先頭にして、API接続に関するリリースが続いている中で、日本のFinTechの加速を感じます。制度も整備しつつチャレンジを進めている段階ですが、銀行にいて、具体的な反響や変化を感じられることはありますか。


三菱UFJフィナンシャル・グループデジタルイノベーション推進部シニアアナリスト 藤井達人氏

 藤井氏:私は4年前に中途採用で入社しており、前職は外資系IT企業でコンサルタントとして働いていました。「銀行は堅いカルチャーだし、仕事をしていくのは大変ではないか」とよく言われますが、堅いカルチャーを柔らかく変えることが仕事だとは思っていません。

 言い方が難しいのですが、大企業では業績目標を達成するために、その中にある構造的な目標を達成しようとします。すると、過去の成功事例の延長線上で達成しようとするのが普通の人の発想です。

 そうした中では、効果が見えるかわからない新しいことにリソースを割くことが難しいのは当然です。堅いカルチャーが悪いという文脈ではなく、時代がどう変化していて、新しい仕事、新しいやり方はこうなっていくという道標を示すのが、われわれのような部署や人間の仕事だと思うのです。だから、オープンイノベーションなどでベンチャーなど外部の人たちとマッチングさせているのは、新しい方向をセットしていくイメージなんですね。

 数年経って、進め方がなんとなく分かってきました。社内の人が持っている課題感に近しい外の力を見極めてマッチングすることが重要であると感じています。

 そこからいくつか成功事例を作っていくと、だんだん伝わっていきます。アクセラレータプログラムなどをやると「こういうことができるらしい」というイメージができあがっていく。このモメンタム(勢い)をずっと続けていくのです。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. セキュリティ

    「デジタル・フォレンジック」から始まるセキュリティ災禍論--活用したいIT業界の防災マニュアル

  2. 運用管理

    「無線LANがつながらない」という問い合わせにAIで対応、トラブル解決の切り札とは

  3. 運用管理

    Oracle DatabaseのAzure移行時におけるポイント、移行前に確認しておきたい障害対策

  4. 運用管理

    Google Chrome ブラウザ がセキュリティを強化、ゼロトラスト移行で高まるブラウザの重要性

  5. ビジネスアプリケーション

    技術進化でさらに発展するデータサイエンス/アナリティクス、最新の6大トレンドを解説

ZDNET Japan クイックポール

注目している大規模言語モデル(LLM)を教えてください

NEWSLETTERS

エンタープライズ・コンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]