前回は、個人主導データ流通を実現するための仕組みである「PDS(Personal Data Store)や「情報銀行」の受容性調査の結果について紹介した。
しかし、必ずしもPDSや情報銀行そのものが必要なわけではなことも強調しておきたい。必要なのは、“データ流通・利活用に個人が関与”することであり、それを実現する仕組みは今後さまざまに出てくるだろう。
2010年頃から先行し、個人主導データ流通のための取り組みが進められていた英国政府の「midata」と米国政府の「My Data」の目的を振り返っておこう。
それは、個人が自分自身のデータをコントロールし、自身のためにも利用可能にすることによって生活者の権限強化(Consumer Empowerment)を実現することだった。
企業と生活者の情報格差がデジタルマーケティング領域で拡大
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なぜ、データ流通やデータ利活用において生活者の権限を強化する必要があるのか。それはデータを取り巻く技術革新が企業側で圧倒的に進んだ結果、企業と生活者の情報の非対称性が拡大してしまったことに起因する。
AdTech(アドテクノロジ)などのデジタルマーケティングの進化によって、企業のマーケティング活動は確かに効率化・最適化されているかもしれない。
しかし、生活者に関するデータ収集や企業間データ流通が高度化してきている一方で、生活者がそこに関与できるオプションは極めて限定的である。
生活者は、インターネットを利用して企業が提供するサービスや商品に関する情報は豊富に収集できるようになったが、“自分自身の情報”は企業に吸い取られる一方だ。
生活者による関与は限定的