介護や単身赴任でのテレワーク効果を検証--レノボ・ジャパン

國谷武史 (編集部)

2017-07-24 17:22

 政府や東京都などが呼び掛ける「テレワーク・デイ」が実施された7月24日、レノボ・ジャパンは、同社での実施状況を報道機関向けに説明した。4月に導入した介護離職や単身赴任の解消に向けた施策では、一定の効果が出始めているという。

「テレワーク・デイ」のレノボ東京本社の内部。対象者のほとんどがテレワークで仕事をしていた''
「テレワーク・デイ」のレノボ東京本社の内部。対象者のほとんどがテレワークで仕事をしていた

 この日のキャンペーンに合わせ、レノボ・ジャパンはグループ4社の正社員と派遣社員を対象に、3回目となるテレワークを実施。コールセンター担当者や外部委託の業務従事者などを除く約800人が参加した。当初は、2011年の東日本大震災に伴う事業継続の観点からテレワークを試行し、全社規模では2016年に1回目、今年3月に2回目を実施している。

レノボ・ジャパン
レノボ・ジャパン 人事担当執行役員兼NECパーソナルコンピュータ 人事担当執行役員常務の上南順生氏

 介護離職や単身赴任の解消に向けた施策は、「介護離職者ゼロ宣言」と「ふるさと人事」の名称で行われている。レノボ・ジャパン 人事担当執行役員兼NECパーソナルコンピュータ 人事担当執行役員常務の上南順生氏によると、2つの施策は高齢化社会が進む中で、優秀な社員を確保する狙いがある。同社の平均年齢は男性が46.6歳、女性が42.7歳であり、従業員の77%を40代以上が占める。

 従業員がそれぞれの施策を利用する際には、会社側が個々の家庭事情を考慮して人事部門と連携しながら、勤務環境を調整しているという。

 例えば、介護のために4月から制度を利用して札幌でテレワーク勤務するAさんは、北海道と東北のパートナー企業に対する技術支援を担当する。通常業務の遂行に大きな問題はないといい、毎週月曜日にウェブ会議を通じて業務状況を報告している。

 利用を始めた当初は、業務環境に慣れない点もあったが短い期間でカバーできたといい、パートナーから新規顧客を紹介されるなどのメリットがあった。一方、大量の印刷物を用意しなればならない時や、デモ機および納入製品を準備する時は、会社のリソースを利用しづらい点がデメリットになっているという。

 プライベートでは、親の通院で送迎したり、昼休み薬を受け取ったりできるようになり、朝にはPTAとして子どもの通学路で安全監視にも取り組めるようになり、一日の中で時間のセルフコントロールができる効果があった。ただ、顧客訪問の無い日は在宅勤務になるため、近所の目が気になることがしばしあるという。

 「Aさんのケースでは、特に朝の時間を有効活用できるようになった。ゴミ出しで近所の目が気になるという意見は、笑い話のようでもあり本音でもあり、取り組みを進める上でさまざまな実情が分かってくる」(上南氏)

介護や育児などと仕事とのバランスを目指す「介護離職者ゼロ宣言」の概要''
介護や育児などと仕事とのバランスを目指す「介護離職者ゼロ宣言」の概要

 また「ふるさと人事」は、単身赴任期間が5年以上という従業員が22人いることから、テレワークによって、遠方に暮らす家族と同居できるようにしたり、離職することなく介護したりできるようにするべく導入した。

 東京本社の人事担当で10年にわたって単身赴任をしていたBさんは、7月から故郷に近い山形・米沢事業所に異動し、東京での業務内容をテレワークで米沢から行っている。現時点で東京勤務の時とほぼ変わらず仕事ができるという。毎週水曜日に定例のウェブ会議で情報を共有したり、業務の進み具合を報告したりしている。

 Bさんケースでは、家族と再び暮らせるようになり、単身赴任中の不規則な食生活や満員電車の通勤ストレスなどから解放された。一方、自分のための自由な時間が取りづらくなったり、通勤時間が数分になったことで仕事とプライベートの意識の切り替えが難しくなったりといったことを感じているという。

 この他に同社では極端なケースというが、サプライチェーンの担当者が静岡県下田市に移住し、週に1度だけ東京本社に出勤している。以前は1日の通勤時間が3時間にもなり、現在はこれを解消して、ワークライフバランスを確保しているとのことだ。

長期の単身赴任解消を目指す「ふるさと人事」の概要''
長期の単身赴任解消を目指す「ふるさと人事」の概要

 上南氏によれば、同社にとってテレワークは、その下地がIBM時代からあったものの、全社規模では段階的に実施することで、企業文化としての定着を目指している。PCやモバイル機器のメーカーという背景はあるものの、「どこにいても社員同士がつながり、仕事を作り上げていくという意識を大事にしている」という。

 中にはテレワークに懐疑的な従業員もいる。「例えば、少人数チームでメンバーと顔を合わせながら仕事をしたいという管理者の場合、メンバーの顔を見ないと不安だというが、実際にはメンバーの状況を意外と把握できていなかった。テレワークにしたことで、メンバーから『ホウレンソウ(報告・連絡・相談)』が活発になされ、以前よりも良くなった」(上南氏)

 同社では、今後もテレワークを利用した業務環境の改善に取り組むとしている。

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