IoTサービスの外販化を目指す--三菱電機に聞く、基盤づくり

國谷武史 (編集部)

2017-10-11 06:00

 三菱電機と日本オラクルは8月、IoT基盤の開発で協業することを発表した。三菱電機が提唱する「FA-ITオープンプラットフォーム」に基づき、同社はOracleのクラウドサービスをベースに、IoTやビッグデータを活用したファクトリオートメーション(FA)の外部向けサービスを始める。

 三菱電機では、2003年から製造現場の可視化などを通じて、さまざまな改善やコストの削減などを図る「e-F@ctory」を推進している。近年はITも取り入れたソリューションの多様化を進め、2017年3月にはエッジコンピューティング領域におけるITとFAの融合ソリューション「FA-ITオープンプラットフォーム」も発表。生産現場のデータ収集や分析、改善の仕組みを短期間で構築できるとしている。


三菱電機 FAシステム事業本部 FAソリューション事業推進部 FAソリューション計画部戦略担当マネージャーの伊坂隆弘氏(Oracle OpenWorld 2017会場にて)

 オラクルとの協業では、このFA-ITオープンプラットフォームにオラクルのデータベースやIoT、Java、BIなどの複数のクラウドサービスを採用する。三菱電機 FAシステム本部の伊坂隆弘氏によれば、製造現場では“サイロ化”している各種システムの情報をどう連携させるかが課題になり、その解決策としてクラウドを利用することになった。

 また、情報を収集・分析し、システムや機器の継続的な改善を図るフィードバックループを実現する上でも、クラウドサービスの仕組みが適していると判断したという。ただしサービスを自前で開発していては多大な時間やコストを伴う。このため、「できる限り標準的であることを重視した。設定ベースの変更だけでアプリケーションを展開できること、データベースシェアが高いこと、マルチテナント対応であることからオラクルを採用した」(伊坂氏)という。

 e-F@ctoryのさまざまな仕組みは、自社工場などを中心に約7300台のシステムに導入されている。例えば、名古屋製作所可児工場(岐阜県)では、1万4000種以上におよぶ顧客からの部品ニーズに対して品質の向上が課題になっていたといい、製造プロセス管理の改善にe-F@ctoryを採用。その結果、生産効率の30%向上や稼働率の60%向上、プロセス数の55%削減といった成果を挙げている。

 FA-ITオープンプラットフォームは、これまで現場中心だった生産システムの改善や予防保全に向けたアプローチをグローバルに広げることを目指す。そこには上述の“つながる”仕組みが欠かせず、顧客ごとのシステムの差異も吸収できる“柔軟性”が重要だったという。

これまで製造現場主体だった改善の取り組みは、IoT化によってERPシステムなどとの連携や世界各地の拠点もつなぐものに進化しつつある''
これまで製造現場主体だった改善の取り組みは、IoT化によってERPシステムなどとの連携や世界各地の拠点もつなぐものに進化しつつある

 「SDKなどを使って顧客ごとにアプリケーションを開発してしまうと、メンテナンスの手間も大きい。外販サービスとして収益性も考慮すれば、標準的でオープンな仕組みが求められる」(伊坂氏)

 FA-ITオープンプラットフォームのサービスは、同社製の生産管理システムを導入している顧客向けに提供する。「まずはデータを収集し、データクレンジングなどを通じて適切な分析ができるまでの仕組みを確立する。その上で分析から改善につながるアドバイスなどを提供できるようにしていきたい」と伊坂氏は話す。

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