今週の明言

デジタル通貨金融サービスに進出したIIJ鈴木会長の決意

松岡功

2018-02-09 11:00

 本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。

 今回は、IIJの鈴木幸一 代表取締役会長兼CEOと、日本IBMの纐纈昌嗣 執行役員の発言を紹介する。

「日本におけるデジタル通貨金融分野のプラットフォームを提供したい」
(IIJ 鈴木幸一 代表取締役会長兼CEO)


IIJの鈴木幸一 代表取締役会長兼CEO

 インターネットイニシアティブ(IIJ)が先頃、デジタル通貨の取引・決済サービスを展開する新会社を金融機関などと共同で設立したと発表した。鈴木氏の冒頭の発言は、その発表会見で、新しい事業への強い意欲を語ったものである。

 「ディーカレット」と呼ぶ新会社はIIJが35%の株式を保有し、三菱東京UFJ銀行、三井住友銀行、野村ホールディングス、大和証券グループ、日本生命保険、第一生命保険、伊藤忠商事、東日本旅客鉄道、電通、ビックカメラなど17社が出資して設立。各出資会社が事業連携しながら、新たな社会インフラとしてデジタル通貨取引のスタンダードとなるプラットフォームの提供を目指す構えだ。

 なお、IIJではデジタル通貨を「ビットコインをはじめとする仮想通貨や銀行が発行を検討している法定通貨のデジタル版などの総称」と説明している。

 新会社は、IIJ がこれまで金融機関向けに提供してきた高速通貨取引システムのノウハウおよびインターネット関連技術をベースに、国内金融機関と同等のサービスに対するセキュリティレベルや不正防止を担保した信頼性の高いデジタル通貨金融サービスのプラットフォームを開発し提供していく計画だ。


図:新会社「ディーカレット」が提供するサービスのイメージ

 具体的なサービスとして、2018年度下期から順次、ウォレットを通じた「デジタル通貨交換サービス」および「デジタル通貨を利用した決済サービス」を開始するとしている。

 今回の取り組みについてのさらに詳しい内容は発表資料をご覧いただくとして、ここでは鈴木氏の発言に注目したい。同氏は今回の新しい事業への進出に向けて次のように語った。

 「IIJを設立して26年間、インターネット関連の技術やサービスを手掛けてきて実感しているのは、インターネットが既存のビジネスモデルを代替しつつあることだ。金融分野でもネット銀行やネット証券が定着し、最近ではFinTechをめぐる動きが活発になり、さらにブロックチェーンが中核技術として注目されるようになってきた」

 そして、こう続けた。

 「その金融分野のビジネスモデルにおいて、今後もっとも大きな変化の動きとなるのが、通貨のデジタル化とその取引および決済の仕組みづくりだ。しかもそれは金融機関と同等の安全性と信頼性を担保しなければならない。この動きはこれから日本でも必然となる。そこで、IIJは各業界を代表する出資会社と協力して今回の取り組みを推進することにした」

 鈴木氏は会見の冒頭でこうした想いを6分余りにわたって語ったが、IIJを創業したときから、いつかは自ら金融サービスに進出することを想定していたように、筆者には受け取れた。同時に、キャッシュレスの世界を実現しようという強い決意を感じた会見だった。

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