内山悟志「IT部門はどこに向かうのか」

IT部門人材のイノベーションへの適性

内山悟志 (ITRエグゼクティブ・アナリスト)

2018-02-14 07:30

 あらゆる業界にデジタライゼーションの波が押し寄せる中、多くの企業ではデジタル技術を活用したイノベーションを推進する人材を求めています。それでは、現在のIT部門の人材はイノベーションの推進において適性を持っているのでしょうか。

IT部門人材が適合する点と不足する点

 イノベーション創出には、人や組織を動かしながら全体を統括するプロデューサー、技術的な目利き力と実践力を持ったデベロッパー、そしてアイデアを生み出し、モデル化するデザイナーの3つのタイプの人材が必要となることは以前述べました(本連載「イノベーションに求められる人材像とは」。

 それでは、現在のIT部門にこのようなイノベーション人材に適した人材は存在するでしょうか。3つの人材タイプごとに適合する点と不足する点が存在すると考えられます(図1)。


 プロデューサーが主に担うビジネス・マネジメント力や組織牽引力については、これまでのプロジェクト管理や、事業部門間の調整を行ってきたIT部門の経験やスキルを生かすことができるでしょう。また、デベロッパーが主に担う技術調査力、技術適用力、試作・改善力についても、これまでIT技術の目利き役を果たしてきた経験が役立つはずです。

 一方、この領域のスキルについては、ユーザー企業の人材があらゆる最新技術を研究し、熟知することは困難であったり、プロトタイプの開発を迅速に行うスキルが不足したりするため、ITベンダーの力を借りることも多いと考えられます。その際には、IT部門の人材が他の人材(プロデューサーやデザイナー)とITベンダーの橋渡し役を担うことができるでしょう。

 現時点においてIT部門に最も不足しているのは、デザイナーのスキルではないでしょうか。アイデアを生み出したり、モデル化したりするには情報システム関連のスキルだけではなく、デザイン思考や未来視点で仮説を設定するスキルを必要とします。着想や企画構築のプロセスも、これまでのシステム構築の超上流工程で行われてきたビジネス分析や要求定義とは異なるアプローチが必要となります。

 また、イノベーション案件の多くは、最初から明確なシステム要件が決まっているわけではないため、仮説を検証しながら軌道修正を繰り返していくことが求められ、アジャイル的にプロジェクトを推進するスキルが必要となるでしょう。また、プロデューサーにもデザイナーにも必要な外部環境把握力は、ビジネスを取り巻くさまざまな環境に目を向ける幅広い視野と、最新の動向や将来の行く先を正しく見極める洞察力が必要となります。

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